本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
注意すると逆ギレする隣人
憧れの一人暮らし。私が選んだのは、駅近で家賃が相場より安い、木造アパートでした。
「壁が薄いから気をつけてね」
仲介業者さんにそう言われていましたが、私は日中ほとんど家にいないし、寝るだけの部屋なら問題ないだろうと高をくくっていたのです。
しかし、その甘い考えは、隣に新しい住人が越してきてから完全に打ち砕かれました。
ある日の深夜2時。
『ドッドッドッ！ ガタガタガタ……！』
突然の地響きのような音と振動で、私は飛び起きました。
音源は壁のすぐ向こう。なんと隣人は、皆が寝静まる真夜中に洗濯機を回し始めたのです。木造アパートの薄い壁を通し、脱水音は轟音となって響き渡ります。
翌朝、意を決して隣のチャイムを鳴らしました。出てきたのは若い男性。
「あの、すみません。昨夜の洗濯機の音なんですが、深夜は響くので控えていただけませんか？」
できるだけ丁寧に伝えたつもりでした。しかし、彼は面倒くさそうに鼻で笑ったのです。
「はぁ？ 俺、夜勤明けなんですよ。深夜に洗濯して何が悪い？」
「でも、規約でも……」
「うるさいなぁ！ 文句あるなら出てけば？」
バタン！ と目の前でドアを閉められ、私は呆然としました。
それからも深夜の洗濯は続き、私は慢性的な睡眠不足に。
そんな時、共用部を掃除している大家さんに遭遇しました。
救世主は大家さん
これまでの経緯を全て打ち明けると彼女は、持っていたほうきを床に突き立て、言ったのです。
「私に任せなさい！」
その夜、また洗濯が始まりました。すると数分後、隣の部屋のチャイムが激しく鳴らされ、洗濯機が止まりました。壁越しに大家さんのドスの効いた声が聞こえてきます。
翌日、ゴミ捨て場で会った大家さんにお礼を言うと、彼女はニヤリと笑って「種明かし」をしてくれました。
「ああいう手合いに正論は通じないからね。こう言ってやったんだよ。『このアパート、電気系統が特殊でね。深夜に大きな電力使うと漏電して、火が出る可能性があるのよ。前の住人はそれでボヤ騒ぎ起こして、多額の賠償金背負って大変だったんだけど……あんたも同じ目に遭いたいかい？』ってね」
もちろん、それは真っ赤な嘘。でも、「火事と借金」という言葉の破壊力は抜群だったようです。
それ以来、隣人は夜9時以降、物音ひとつ立てなくなりました。理不尽なトラブルには、頼れる第三者の介入が必要だと痛感した出来事でした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
心に響くストーリーをもっと読みたい方
【他のおすすめ短編小説を見る】
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
