
フリマアプリで過熱する政治家の名刺売買の実態とSNSで広がる困惑の渦
年末の片付けで思わぬお宝が見つかることもある昨今ですが、フリマアプリの世界では今、私たちの常識を揺さぶるような取引が静かに、そして熱を帯びて行われています。かつては握手とともに手渡された信頼の証である政治家の名刺が、数千円から数万円という価格で次々と落札されているのです。
マーケットを覗くと、高市早苗総理大臣の名刺には約1万円、大阪府の吉村洋文知事の名刺には9000円前後の値がつき、すでに「売り切れ」の文字が並んでいました。さらに時代を遡り、昭和の面影を残す田中角栄元総理のものとされる一枚には、5万5000円という驚くべき価格が提示されています。本来は自己紹介の道具に過ぎないはずの紙片が、これほどまでの資産価値を持つ現実に、時代の変化を感じずにはいられません。
この異様な光景に対し、SNS上ではリアルな感情が溢れ出しています。ネットユーザーからは
「買ったところで何に使うのか」
という至極真っ当な疑問や、
「名刺を売るなんて失礼だし、もらった時の信頼関係はどうなるんだろう」
といった困惑の声が目立ちました。その一方で
「歴史的な資料としての価値があるのかもしれない」
と分析する層や、
「大掃除で見つけたら自分も出品してしまいそう」
という、現代的な割り切りを見せる声も混ざり合っています。
専門家の見解によれば、譲り受けた名刺を本人が売却すること自体に、現在の法律で直接的な違法性を問うのは難しいようです。しかし、そこには氏名や役職といった極めて個人的な情報が刻まれています。法的なグレーゾーンというよりも、受け取った側の倫理観や、手渡した側の心中を推し量る想像力が試されているのかもしれません。
かつて名刺交換は、その場限りの縁を未来へ繋ぐ儀式でした。それが今、デジタルな市場で匿名性の高い商品として流転していく。
画面越しに提示される高額な数字を眺めていると、人と人が対面で言葉を交わすことの本来の価値が、どこか遠い場所へ置き去りにされているような、割り切れない寂しさを覚えます。














