世界中で争奪戦が繰り広げられた「ラブブ」の希少価値が供給増で低下
かつてはサンリオのハローキティに匹敵する存在になるとまで期待された、中国の玩具大手「ポップマート(泡泡瑪特)」の勢いに急ブレーキがかかりました。香港人イラストレーターのカシン・ルン氏が描く、ウサギのような長い耳とギザギザの歯が特徴のキャラクター「ラブブ(LABUBU)」は、2024年に人気アイドルが身につけたことを機に世界的な社会現象を巻き起こしました。
その熱狂ぶりは凄まじく、2025年に入ってから8月の最高値まで株価は約3.8倍にまで跳ね上がりました。しかし、12月末までに状況は一変。ピーク時から株価は4割を超える下落を記録し、市場関係者の間に動揺が広がっています。急落の主な要因は、商品の供給量が増えたことで中古市場での価格が崩れ、投資目的の資金が一気に引き揚げたことにあります。
ラブブの人気を支えていたのは、中身が分からない「ブラインドボックス」形式がもたらす射幸性と、限定フィギュアの圧倒的な希少性でした。しかし、中国国内での供給量増加や、期待された米国の年末商戦での伸び悩みを受け、SNS上ではユーザーから厳しい現実を指摘する声が相次いでいます。
「投資目的で買っていた人は、今すぐ売らないとただのゴミになる。ブームが終わる時は一瞬で本当に怖い」
「結局は一過性の流行で、キャラクターそのものに愛着がある人は少なかったのかも。あんなに流行っていたのに」
と、コンテンツの持続性に疑問を呈しました。
さらに、
「限定品だと思って高値で買ったのに、後から大量生産されるのは裏切りだ」
といった、運営側の戦略に対する不信感も露わにする声が目立ち始めています。
今回の株価急落は「キャラクターの魅力」が「資産価値」にすり替わってしまった市場の歪みが表面化した結果だと感じます。サンリオのように数十年単位で愛され続けるブランドは、流行に左右されないファンとの情緒的な繋がりを大切にしています。
対してラブブは、SNSでの映えや二次流通での利益といった、外的な要因で人気が膨らみすぎていた印象を拭えません。ブランド側が「希少性」という魔法を解いてしまった今、残されたのは「キャラクターそのものを本当に愛しているファン」だけです。
熱狂が去った後の静けさの中で、ラブブが単なる一過性のトレンドで終わるのか、あるいは真の文化として定着できるのか。
ポップマートは今、ブランドの真価を問われる極めて重要な局面を迎えています。














