始業前の暗黙のルール
「おはようございます!」
元気な声とともにオフィスに入ってきたのは、いつも始業ギリギリに来る彼女。
時計の針は8時59分。
9時始業の我が社において、遅刻ではありません。
しかし、私の職場には「始業15分前には出社し、掃除や雑務を済ませる」という謎の暗黙ルールが存在します。
私を含め、他の社員は8時45分からデスクを拭いたり、お茶の準備をしたりして「奉仕」しているのです。
(あーあ、今日も課長の機嫌が悪くなる……)
私がそう思った矢先、ついに課長が彼女を呼び止めました。
「おい、君。またこの時間か」
課長の声がフロアに響きます。
彼女は不思議そうな顔で振り返りました。
「はい。9時始業ですので、間に合っていますが」
「そういうことじゃないんだよ!みんな15分前には来て、掃除や準備をしてるだろう。社会人としての常識だぞ」
課長の説教モードに入りました。
正論の結果
私はハラハラしながら見ていましたが、彼女は眉一つ動かさず、冷静に切り返したのです。
「課長、確認させてください。その15分前の掃除や準備は、『業務命令』でしょうか?」
予想外の質問に、課長がたじろぎます。
「い、いや……みんな自主的にやってることで……」
「では、ボランティアということですね? 業務命令であれば早出残業を申請させていただきますが、自主的なものなら、私は参加いたしません」
「なっ……!」
「その分、就業時間中は誰よりも集中して成果を出しますので。それでは、仕事に戻ります」
9時のチャイムと同時に、彼女はパソコンに向かい、猛烈なスピードでキーボードを叩き始めました。
顔を真っ赤にして黙り込む課長。 そして、あっけにとられながらも、どこか晴れやかな顔を見合わせる私たち。
「……かっこいい」
思わず誰かが呟きました。
今まで「なんとなく」で従っていたサービス早出。
彼女のあの一言以来、朝の掃除当番が正式に「業務時間内」のローテーション制に変わりました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














