「やめてください!」何度離れても距離を詰めてくる同僚。拒絶したあとに残った違和感
少し離れても、また距離が戻っていた
同じ時期に職場へ入った人がいた。
長机に椅子が二つ並び、片方が私、もう片方がその方の席だった。
覚えることが多い時期だったので、最初は分からないことを聞かれることもあった。
「これ、どうやるんでしたっけ」
「こっちを先に押してください」
そんなやり取りをする、ごく普通の同僚だった。
いつからだったのかは、はっきり覚えていない。ただ、少しずつ距離の近さが気になるようになった。
席では、私は椅子を少し離す。並んで待つ場面でも、少し距離を取る。それでも、しばらくするとまた近くにいる。
一度だけなら偶然だと思えた。でも、それが何度も続いた。
私は椅子を離し、返事を短くし、目を合わせることも減らした。
言葉にしなくても、これだけ距離を取れば分かってもらえると思っていた。
私の様子に気づいたのか、別の同僚から声をかけられたこともある。
「大丈夫ですか」
「はい、大丈夫です」
そう答えながら、自分でも少しずつ疲れているのが分かっていた。
けれど状況は変わらなかった。こちらが離れると、しばらくしてまた距離が近くなる。その繰り返しだった。
「やめてください」と声が出た
そしてある日、その日も私が少し離れたあと、気づくとまたすぐそばにいた。
何度目だったのかは覚えていない。
その瞬間、反射的に声が出た。
「やめてください!」
自分でも驚くほど大きな声だった。
書類をめくる音が止まり、その方も動きを止めた。私はそれ以上、何も言えなかった。
少しして、職場にはまたいつもの音が戻った。
変わったのは、その日からだった。
次の日も、その次の日も、以前のようにそばへ寄ってくることはなくなった。並んで待つときも、近づいてこなくなった。
止まったからこそ、残った違和感
止まったことにはほっとした。それなのに、気持ちはすっきりしなかった。
小さく距離を取っていたときには何も変わらなかったのに、あの声を出した途端に止まった。そのことが、ずっと引っかかっていた。
昼休みに同僚と話したとき、私はふと口にした。
「今まで分かっていなかったのかな」
本当に気づいていなかったのかもしれない。私が距離を取っていることを、拒絶だとは受け取っていなかったのかもしれない。
ただ、その答えを本人に聞いたことはない。
謝罪の言葉もなかった。それ以降、話しかけられることもほとんどない。仕事では必要なことだけをこなし、その方はほかの人とは普通に話している。
今も椅子は二つ、同じ机に並んでいる。
私は毎朝、その片方に座る。もう以前のように距離を詰められることはない。
それでも時々思う。
あそこまで大きな声を出さなければ、伝わらなかったのだろうかと。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














