「こんなところにあったんですね」荷物で狭くなった隣家との通路。隣人とのトラブルの中で気づいた、小さな杭とは
雨の朝、さらに狭くなっていた通路
雨の朝、傘を畳んで家の脇の細い通路に入ると、濡れた段ボールが肩に触れました。
そこはお隣との境目に沿った、私が裏の物置やゴミ置き場へ行くときに使う道です。
40代くらいのお隣の奥さんが、自転車や段ボールの荷物を境目ぎりぎりに置くようになって、もう数か月。
自転車の前輪や荷物の角が通路側へ出ていることもありましたが、私はそのたびに体をよけて通っていました。
ところがその朝、通路の端に置いていた植木鉢が斜めにずれ、そのすぐ横まで自転車の前輪が出ていました。
葉の先も折れ、受け皿には泥水がたまっています。
夕方、帰ってきた奥さんに門の前で声をかけました。
「すみません。植木鉢がずれて、葉も折れていたんです。自転車や荷物、もう少しそちらに寄せてもらえませんか」
奥さんは通路を見てから、少し困ったような顔をしました。
「でも、狭いんだもの。少しくらいいいじゃないですか」
「雨の日は、私も荷物をよけながら通っているんです」
「すぐにどけられる物ばかりですし、少しくらいいいじゃないですか」
同じ言葉をもう一度聞き、私は言いました。
「それなら、どこまでがお互いの側なのか、一度自治会長さんにも一緒に見てもらいませんか」
「…そこまでしなくても」
「毎日通る場所なので、確認しておきたいんです」
奥さんはそれ以上何も言わず、玄関へ入っていきました。
土の中から見つかった小さな杭
翌日、私は70代くらいの自治会長さんを訪ね、通路が狭くなって困っていることを話しました。
「毎日のことなら、一度一緒に見てみましょうか」
その日の夕方、自治会長さんは奥さんにも声をかけ、三人で通路を確認しました。
段ボールを少し動かして足元を見ると、土に埋もれるように、頭に赤い印のついた小さな杭がありました。
自治会長さんはしゃがみ込んで、それを見ました。
「ここに杭があったんですね。境目の目印にしていたものかもしれませんね。少なくとも、荷物は通路にはみ出さないように置いたほうがよさそうです」
奥さんも杭と自転車を見比べました。
「…こんなところにあったんですね」
その場で言い争いになることはなく、奥さんは自転車と段ボールを自分の家側へ寄せました。私はずれていた植木鉢を元の位置へ戻しました。
それからは、通路をふさぐように荷物が置かれることはなくなりました。
次の雨の朝、傘を差したまま通路を歩いていると、奥さんが自転車のサドルを拭いていました。私に気づくと小さく頭を下げ、自転車をさらに自分の側へ寄せてくれました。
私も軽く会釈をして、そのまま通路を抜けました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














