「じゃれてるだけだと思ってました」隣の犬にじゃれつかれてズボンに穴があいた僕。事情を知った飼い主がすぐにしたこと
たんすの奥から出てきた2本
衣替えをしていた日曜日、たんすの奥から、すそがほつれたズボンを2本取り出した。
どちらも、普段の外出によくはいていたものだ。
傷んだきっかけは、隣の家の犬だった。
小型犬で、茶色くて目の丸い人懐っこい子だ。
僕を見かけると喜んで寄ってきて、足もとにじゃれつく。
そのうちズボンのすそを口にくわえて、軽く引っ張ることが何度かあった。
最初は僕も「こらこら」と笑って離していたのだが、同じことが重なるうちに、生地がほつれて小さな穴があいてしまった。
「それ、どうしたの?」
妻がのぞきこんできたので、僕はほつれた部分を見せた。
「隣の犬だよ。じゃれてすそをくわえるだろ。気づいたら、これで2本目」
「2本も?それなら、お隣さんに言ったほうがいいんじゃない?」
「でもなあ……悪気があるわけじゃないし、犬もかわいいから言いにくくてさ」
飼い主の奥さんには、普段から野菜のおすそ分けをもらっている。そんなこともあって、僕は余計に切り出しにくかった。
結局、犬が庭に出ていないときを見計らって家を出るようになった。自分の家から出るだけなのに、隣の様子を確認している自分が少し情けなかった。
じゃれているだけでも、困っていることは伝えた
ある朝、ごみを出そうと門を出たときだった。
隣の犬が僕を見つけると、いつものように駆け寄ってきた。そして足もとではしゃぎながら、ズボンのすそを口にくわえた。
「ほらほら、今日はやめてくれよ」
僕がすそを外そうとしていると、ちょうど隣の玄関が開き、飼い主の奥さんが出てきた。
「おはようございます。また行ってる。この子、本当にあなたが好きなんですね」
奥さんはいつものように笑っていた。
その様子を見て、僕は今まで奥さんも、犬が少しじゃれている程度にしか思っていなかったのだろうと気づいた。
「そうみたいですね。僕もかわいいなと思ってるんですけど……実は、すそをくわえて引っ張られるうちに、穴があいたズボンが2本ありまして」
「えっ、2本も?」
奥さんの表情が変わった。すぐに犬を僕の足もとから離し、ズボンのすそを見た。
庭で草むしりをしていたご主人も、こちらに気づいて手を止めた。
「ごめんなさい。そんなことになってるとは思ってなくて…」
「いや、僕も早く言えばよかったんです」
その週の土曜日には、隣から作業をする音が聞こえ、門のすき間には板が取り付けられていた。
翌日、奥さんが改めてうちを訪ねてきた。
「昨日は本当にすみませんでした。ズボンのことも、もしよければ弁償させてください」
「そこまでは大丈夫ですよ」
僕がそう答えると、奥さんは「本当にごめんなさい」ともう一度頭を下げた。
それから、門の前を通るたびに、犬は板の向こうからこちらを見てしっぽを振っている。
僕も立ち止まって「元気か」と声をかける。
犬を嫌いになったわけではない。ただ、困っていることは、もっと早く伝えてもよかったのだと思う。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














