「卵焼きが全然ないじゃないか」朝食バイキングで怒る男性。しかし。振り返って黙った理由
卵焼きを探していた男性客
数年前の秋、30代だった私はひとりで温泉旅館に泊まりました。
楽しみにしていたのは、朝食バイキングの名物の卵焼きです。
朝食会場が開いて間もない時間に入ると、奥の台には焼きたての卵焼きが並んでいました。
私は先に別の料理を取ろうと、近くの台の列に並びました。
少し前には、50代くらいの男性客がいました。男性は台の上を何度も見回し、料理を探しているようでした。
やがて、空になっている大皿の前で足を止めると、台の向こうにいた若い男性スタッフに声をかけました。
「おい、ここ空っぽじゃないか。補充はまだなのか」
「申し訳ありません。確認いたします」
スタッフが答えると、男性はさらに周囲を見回しました。
「卵焼きは?楽しみにして来たのに、全然ないじゃないか」
私は思わず男性のうしろを見ました。卵焼きなら、すぐ後方にある別の台にたっぷり並んでいます。
けれど男性は気づかないまま、手にしていたトングを台に当てながら、声を荒らげました。
「朝からこれじゃ困るよ。ちゃんとしてくれよ」
スタッフは困った表情で頭を下げています。周囲のお客さんも、少し離れながら様子を見ていました。
料理長が示した、すぐうしろの台
しばらくすると、厨房から白い調理服を着た60代くらいの料理長が出てきました。
男性は料理長にも不満を伝えます。
「卵焼きを楽しみにしてたのに、ないじゃないか」
料理長は男性の話を聞くと、そのすぐうしろを手で示しました。
「お客様、卵焼きでしたら、こちらにございます」
男性が振り返ります。
そこには、焼きたての卵焼きが大皿いっぱいに並んでいました。
「こちらの台には、会場を開けたときからご用意しております。どうぞお召し上がりください」
男性はしばらく卵焼きの皿を見つめていましたが、何も言わずに2切れ取ると、そのまま自分の席へ戻っていきました。
料理長は若いスタッフに短く声をかけ、再び厨房へ戻りました。
私もそのあと卵焼きの台へ進み、3切れを皿にのせました。
ほんの少しうしろを振り返れば見つかった卵焼き。探し物が見つからないときほど、まず周囲を見てから尋ねることも大切なのだと感じた朝でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














