「昨日のは、なんていう曲?」隣のお風呂の歌声を気にしていた私。だが、ママ友の一言で固まった理由
誰も住まないお隣の家
隣の空き家を、昔からのママ友が買ったと知ったのは去年のことでした。新しいお隣さんが来ると思っていた夫は、私の話を聞いて目を丸くしました。
「誰も住まないのか?」
「そうなの。ピアノの練習のために使うんですって」
「へえ、それは思いきったな」
ピアノを置く部屋は工事で防音になっていて、音はほとんど聞こえてきません。
騒音でもめたら嫌だと思っていた50代の私たち夫婦も、それなら安心だと胸をなで下ろしました。
ところが、しばらくすると別の音が気になるようになりました。
夜になると、ときどき隣の浴室から大きな歌声が聞こえてくるのです。
窓を閉めていても聞こえ、音程が少し外れるところまで分かるほどでした。
ある晩、夫が居間の窓のほうを見ながら声をひそめました。
「ピアノの部屋は防音なのに、お風呂は丸聞こえだな」
「そうなのよ。本人が知ったら恥ずかしいだろうなって…」
「黙っておくのも優しさじゃないか?」
「でも、私だったら教えてほしいのよね」
昔からの友人だからこそ、言うなら私だと思いました。ただ、どう切り出しても気まずくさせてしまいそうで、なかなか言い出せませんでした。
先に口を開いたのは、垣根の向こう
ある日の昼、庭の鉢植えに水をやっていると、低い垣根の向こうにママ友がいました。目が合うと、彼女がこちらへ寄ってきます。
今日こそ言おう。
私はじょうろを置きました。ところが、先に口を開いたのはママ友のほうでした。
「そういえば、お宅の台所から鼻歌が聞こえてくることあるでしょう。私、あれ聞くの好きなのよ」
「…台所?」
「昨日のは、なんていう曲?」
一瞬、言葉が出ませんでした。
夕飯を作りながら、私は毎日のように気持ちよく歌っていたのです。しかも、自分でも音程が怪しいところがあるのは分かっていました。
隣の歌声が聞こえていたように、こちらの鼻歌も向こうへ届いていたのです。
私は曲名を答えるのがやっとでした。ママ友は満足そうにうなずくと、そのまま隣の家へ戻っていきました。
その夜、夫に話すと、夫は吹き出しました。
「防音が要るのは、うちの台所だったか」
それ以来、夕方になると台所の窓をきちんと閉めるようになりました。それでも鼻歌まではやめられず、今日も玉ねぎを刻みながら、小さな声で歌っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














