「ほら見て、ラッキー」特売の豚ロースを夫に見せたつもりが……スーパーのお肉売り場で赤面した話
特売の豚ロースを見つけた私
50代の私たち夫婦には、スーパーで買い物をするときのお決まりの行動があります。
夫がカートを押し、私が商品を選ぶ。特にお肉売り場では、私がじっくり品定めをするので、夫は少し離れた通路で待っていてくれます。
その日の夕方も、いつものように夫婦でスーパーへ買い物に来ていました。
お肉売り場に着くと、夫がカートを止めました。
「じゃあ、俺はここで待ってるよ」
「うん。今日は生姜焼きにしようと思ってるんだけど」
「いいね。安いのがあったら教えて」
私は夫を残し、豚肉が並んだ冷蔵ケースの前へ向かいました。
値札を見比べながら棚を奥まで確認していると、特売シールが貼られた豚ロースを発見。
しかも、生姜焼きにちょうどよさそうなお肉が、いつもよりずっと安くなっていたのです。
「あっ、これいいじゃない!」
思わず声が出てしまいました。
うれしくなった私は、さっそく夫に見せようとパックを手に取り、通路を振り返りました。
すると、少し先に紺色の上着を着た男性が立っています。
白髪まじりの頭に、少し丸まった肩。背格好も夫によく似ています。
夫が待っているはずの場所にも近かったので、私は何の疑いもなく、その男性のほうへ歩いていきました。
顔を上げた瞬間、頭が真っ白に
男性の前まで行くと、私は豚ロースのパックを差し出しました。
「ほら見て、ラッキー。今日はこれにしよう」
ところが、返事がありません。
「……あれ?」
不思議に思って顔を上げた瞬間、私は固まりました。
目の前にいたのは、夫ではなく、まったく知らない男性だったのです。
男性も驚いたようで、私の顔と差し出された豚ロースを交互に見ています。
「あっ!すみません!夫と間違えちゃって……!」
慌てて頭を下げる私に、男性は笑顔で答えてくれました。
「いえいえ。おいしそうなお肉ですね」
その優しい返事が、ありがたいやら恥ずかしいやら。
私はもう一度謝って、その場を離れました。
恥ずかしさで顔が熱くなり、手に持ったお肉のパックの冷たさが妙に気持ちよく感じられました。
それにしても、本物の夫はどこへ行ったのでしょう。
あたりを見回すと、売り場の向こうからカートを押した夫が手を振っています。
どうやら待っている間に、少し場所を移動していたようです。
近づくと、夫は口元を押さえて笑っていました。
「俺はこっちだよ」
「ちょっと! 見てたなら声かけてよ!」
「いや、あんまりうれしそうに向かっていくからさ…」
そう言いながら、夫はまた吹き出しました。
「もう!本当に恥ずかしかったんだから!」
そう言いつつも、私までおかしくなって笑ってしまいました。
帰りの車に乗り込んでからも、思い出すたびに笑いがこみ上げ、なかなか出発できません。
夫は目尻の涙をぬぐうほど笑っています。
ようやく落ち着いたところで、私はシートベルトを締めながら宣言しました。
「もう決めた。お肉売り場では3回顔を確かめる!」
すると夫は、また肩を震わせながら答えました。
「1回でいいよ。俺が先に手を振るから」
それ以来、夫婦でお肉売り場に行くたびに、この言葉が合言葉になっています。
今でも思い出すだけで笑ってしまう、ちょっと恥ずかしくて、楽しい買い物の思い出です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














