「毎朝お水を替えてるのよ」2年間も枯れない花を自慢する母。私が花びらに触れた瞬間、思わず声を上げた理由
2年たっても枯れない不思議な花
ある日の昼すぎ、実家に帰ると、60代の母が玄関にいました。
靴箱の上に置いた花びんに、小さなじょうろで水を注いでいます。
そこには白とうす紫の花が、きれいに飾られていました。
「あれ、その花って、まだ咲いてるの?」
私が尋ねると、母はうれしそうに答えました。
「そうなのよ。きれいでしょう?もらったお花だから、玄関で大事にしてるの」
その花は、母が知り合いからいただいたものだそうです。
実は、私が初めてその花を見たのは、2年前に帰省したときでした。
それから何度も実家に帰っていますが、花がしおれているところを一度も見たことがありません。
「すごいね。どうやったらそんなに長持ちするの?」
「別に難しいことはしてないわよ。毎朝お水を替えて、あとは話しかけたりしてるだけ」
母はそう言うと、花を眺めてにっこり笑いました。
私は感心してしまいました。花を育てるのが苦手な私にとって、2年間も美しい状態を保てるなんて、信じられないことだったのです。
自分の部屋にも同じ花を飾ってみたい。そんなことまで考えながら、私は母の隣に立ちました。
花びらに触れた瞬間、気づいたこと
近くで見ると、花は相変わらずきれいでした。花びらの色も、2年前とほとんど変わっていません。
「本当にきれいだね。ちょっと触ってもいい?」
私はそっと花びらに指を伸ばしました。
ところが、触れた瞬間、何かがおかしいと感じたのです。
「……あれ?」
花びらは、思っていたよりも硬く、紙のような手触りでした。
気になって茎にも触れてみると、緑のテープで巻かれた内側に、針金のような硬い芯があります。
そこでようやく気づきました。
「お母さん……これ、造花じゃない?」
「えっ?」
母は私の顔を見て、それから花を見つめました。
「そんなはずないわよ。だって、毎朝お水を替えてるのよ?」
「いや、お水は関係ないと思う…。ほら、ここ触ってみて」
母は半信半疑の様子で花びらを触り、続いて茎を確かめました。
しばらく黙っていた母が、ぽつりと言いました。
「……あら、本当だわ」
そして、少し間を置いてから、私の顔を見て笑い出しました。
「どうりで!2年も枯れないなんて、おかしいと思った!」
「お母さん、今まで気づかなかったの?」
「全然! 毎朝ちゃんとお世話してたのに!」
その言葉がおかしくて、私まで吹き出してしまいました。
2人で玄関の上がりかまちに座り込み、しばらく笑いが止まりませんでした。
「私、ずっと造花にお水をあげてたのねえ」
「しかも2年間も。私だって、本物だと思ってたよ」
母は笑いながら花びんを見上げました。
「でも、こんなにきれいなんだから、まあいいわよね」
確かに、花びらにはほこりひとつありません。母が毎日大切にしてきたことだけは、よく分かりました。
その造花は、今も実家の玄関に飾られています。
驚いたことに、母は今でも時々、花びんの水を替えているそうです。
「もう造花だって分かってるんだから、水はいらないでしょ?」
そう尋ねると、母は少し照れたように笑いました。
「そうなんだけどね。なんとなく、習慣になっちゃって」
母らしい返事に、私はまた笑ってしまいました。
きっとこれからも、実家の玄関には、あの白とうす紫の花が変わらず飾られているのでしょう。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














