「わしはな、トマトを山ほどとったんだぞ」義父の口ぐせがうつった5歳の息子。その後、息子がクラスで起こした小さなブーム
帰ってきた息子の口から出た「わし」
30代の私と夫には、5歳の息子がいます。
この夏、息子は初めて夫の実家に泊まりに行きました。
義父のあとを毎日ついて回り、畑仕事も手伝っていたそうです。
ある夏の夕方、夫に連れられて帰ってきた息子は、玄関の土間で小さなリュックを背負ったまま腰に手を当てました。
出迎えた私を見上げると、得意そうに胸を張ります。
「わしはな、トマトを山ほどとったんだぞ」
思わず息子の横にいた夫を見ると、夫も笑いをこらえていました。
自分のことを「わし」と呼ぶ言い方は、義父の口ぐせそのものだったのです。
「なんで笑うんだ!わしは本当のことを言ったぞ」
真顔で言う息子がますます義父にそっくりに見えて、私たちはとうとう吹き出してしまいました。
ひとしきり笑ったあと、夫が目元をぬぐいながら言いました。
「まあ、幼稚園が始まったら、そのうち戻るだろ」
「そうだよね。友だちと話してたら、またいつもの言い方になるよね」
私もそう思っていました。
先生から聞いた、思いがけないブーム
ところが幼稚園が始まって数日たっても、息子の「わし」は抜けませんでした。
ある日の夕方、お迎えに行くと、門のところで先生が笑いながら私を呼び止めました。
「お母さん、最近クラスで“わし”って言うのがはやってるんですよ」
「えっ…もしかして、うちの子からですか?」
「そうみたいです。今日も積み木のところで、『わしが先』『いや、わしが先』って、みんな楽しそうでしたよ」
驚いて園庭を見ると、息子と仲のいい友だちが腰に手を当てて並んでいます。
「わしはね」「わしもね」
そんな声まで聞こえてきて、私は思わず口元を押さえました。元に戻るどころか、息子の「わし」は友だちにまで広がっていたのです。
その夜、先生から聞いた話を夫にすると、夫はしばらく笑いが止まりませんでした。
私は麦茶を注ぎながら言いました。
「2週間で、すっかり義父の口ぐせがうつったわね」
「まさかクラスにまで広がるとはなあ」
夫は笑いながら義父に電話をかけました。電話の向こうからは、義父の大きな笑い声が聞こえてきます。
電話を切った夫が、まだ笑いながら言いました。
「親父、『わしの弟子が増えた』って喜んでたよ」
無理に直させるほどでもない気がして、私たちはしばらく見守ることにしました。
先日も、私が玄関で靴をそろえていると、息子が胸を張ってやってきました。
「わしに、まかせとけ」
すっかり板についたその言い方に、また義父の顔が浮かんで、私は笑ってしまいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














