「いえ、期限のことではなくて」店員の説明を遮って怒鳴った男性客。だが、店長にクーポンの店名を指摘された結果
止まったままのレジの列
1年ほど前、夕方のドラッグストアでの出来事です。
仕事帰りの客で店内は混み合い、レジには10人ほどの列ができていました。私は目薬とマスクを手に、列の前のほうで順番を待っていました。
ところが、なかなか列が進みません。
レジのほうを見ると、私の二人前にいる中年の男性客が、若い女性店員と何やら言い合っていました。
男性の手には、割引クーポンが握られています。
「申し訳ありません。こちらのクーポンは、当店ではお使いいただけないんです」
「は?昨日までって書いてあるだろ。たった1日だぞ?」
男性はクーポンを店員さんに突き出しました。
「いえ、期限のことではなくて、こちらが……」
「だからさ!1日くらい何とかしてくれよ!」
店員さんが説明しようとしても、男性は最後まで聞こうとしません。
「申し訳ありませんが……」
「もういい!話にならん。店長を呼んでくれ!」
男性の大きな声が店内に響きました。
店員さんは困った表情で何度も頭を下げています。
その間もレジの列は止まったまま。後ろに並んでいた客たちも、落ち着かない様子でレジのほうを見ていました。
私も何も言えず、ただやり取りが終わるのを待っていました。
店長がクーポンを指さした瞬間
しばらくして、店の奥から店長が出てきました。
店長は男性に軽く頭を下げ、クーポンを受け取ります。
「頼むよ。たった1日過ぎただけなんだからさ」
男性はまだ不満そうで、カウンターを指でたたいていました。
店長はクーポンに目を通すと、その端を指さしました。
「お客様、こちらは別のお店のクーポンでして…」
「……え?」
「ここに書かれているのは、当店とは違うお店の名前なんです。ですので、期限内でもお使いいただけません」
男性はクーポンに顔を近づけました。
「……あれ?これ……」
そこで初めて気づいたのでしょうか。男性は紙を見つめたまま、黙り込んでしまいました。
さっきまでの大声が嘘のように静かになり、私の後ろにいた女性客も、小さく首を振っていました。
「お会計は、このままでよろしいでしょうか?」
店長が尋ねると、男性は小さくうなずき、クーポンを財布にしまいました。
そして、通常の値段で支払いを済ませると、うつむいたまま足早に店を出ていきました。
店長が店員さんの肩にそっと触れると、店員さんはほっとしたように顔を上げました。
「大変お待たせいたしました。次のお客様、どうぞ」
ようやくレジの列が動き始めました。
最初から店員さんの説明を聞いていれば、あんな騒ぎにはならなかったはずです。
男性が黙り込んだあの瞬間と、最後まで落ち着いて対応していた店員さんの姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














