「ママ、マンゴーもうないの?」ホテルの朝食で果物を山盛りにした夫婦。だが、少女のひと言で周囲の視線が集まった
朝食会場で目にした果物の山
夏休みに、家族でリゾートホテルへ出かけたときのことです。
朝食会場は多くの宿泊客でにぎわっていて、私たちもようやく席に案内されました。
ところが、隣のテーブルを見て驚きました。
私より少し年上に見える夫婦が、マンゴーやパイナップルを何皿も運んできていたのです。
夫婦は交代で席を立ち、果物が補充されるたびに取りに行きます。テーブルには、食べきれるのか心配になるほどの果物が並んでいました。
その様子を見ていた小学生の息子が、私の袖を引っ張りました。
「お父さん、見て。あんなに取ったら、ほかの人の分がなくなっちゃうよ」
「そうだね…。とりあえずパンを取っておいで。果物はあとで見よう」
しかし、しばらくすると果物のコーナーは空っぽになってしまいました。
皿を持ってやってきた客たちは、不思議そうに大皿をのぞき込んでいます。そして、夫婦のテーブルに積まれた果物を見ると、困惑した表情を浮かべていました。
通路の向こうに座っていた年配の男性が、ぽつりと言いました。
「あんなに取っちゃったのか…」
それが聞こえたのか、夫婦の妻が周囲を見回しました。
「どうせまた補充されるでしょ。そんなに気にしなくてもいいじゃない」
すると夫も、少し声を大きくして言いました。
「取り放題なんだから、どれだけ取ったって自由だろ」
けれど、二人は取ってきた果物をほとんど食べていません。
ひと口だけ食べた皿もあり、手つかずのマンゴーもたくさん残っていました。
食べ放題とはいえ、さすがに取りすぎではないか。私は何とも言えない気持ちになりました。
女の子のひと言で変わった空気
そのとき、小学生くらいの女の子が、母親と一緒に果物のコーナーへやってきました。
女の子は空っぽの大皿を見つめ、母親を振り返りました。
「ママ、マンゴーもうないの?」
近くにいた若い女性スタッフが、申し訳なさそうに頭を下げました。
「すみません。マンゴーは、今日はもうなくなってしまったんです……」
「えっ、もうないの…?」
女の子は残念そうにうつむきました。
そのやり取りを聞いた近くの客たちが、夫婦のテーブルに目を向けました。
そこには、まだ手をつけていないマンゴーが何皿も残っています。
先ほどまで強気だった夫婦も、周囲の視線に気づいたようでした。
妻は気まずそうに夫の顔を見ましたが、夫は目をそらしたまま何も言いません。
少しの沈黙のあと、妻がゆっくりと立ち上がりました。
そして、まだ手をつけていないマンゴーの皿を持ち、女の子のところへ歩いていったのです。
「あの…これ、まだ食べてないので。よかったら……」
突然差し出された皿に、女の子の母親は戸惑った表情を浮かべました。
女の子もすぐには受け取らず、母親の顔を見上げています。
少し迷った様子でしたが、母親が小さくうなずくと、女の子は「ありがとう」と頭を下げて皿を受け取りました。
母親も硬い表情のまま、短く会釈しました。
その後、夫婦は残った果物をテーブルに置いたまま、足早に会場を出ていきました。
二人の背中を見送りながら、私は複雑な気持ちになりました。せっかくの朝食なのに、誰も気持ちよく食べられなかったように思えたからです。
すると、隣にいた息子が小さな声で言いました。
「お父さん、よかったね。あの子、マンゴー食べられるね」
私は息子にうなずきました。
好きなものを好きなだけ食べられるのは、食べ放題の楽しみです。でも、ほかの人のことも少し考えられたら、こんな気まずい出来事にはならなかったのかもしれません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














