「絶対に返すから!」妹に貸した15万円。毎年届く手紙の残額が10年間変わらなかった末に、届いた11通目に笑った理由
夢を追う妹に貸した15万円
妹が大学を卒業するとき、「就職せずに夢を追いたい」と言い出しました。
向かうのは、実家からも私の家からも遠い大きな街。
両親も遠方に住んでいたため、部屋探しには私が付き添いました。
選んだのは、古いアパートの一室です。昼の光が入る、家具も何もない部屋。妹は段ボール箱をひとつ抱え、嬉しそうに室内を見回していました。
「狭いけど、ここなら頑張れそう!」
「でも、家具もないよ。お金は大丈夫なの?」
「うん!アルバイトでちゃんとためてきたし」
ところが、引っ越しにかかるお金を計算すると、妹の貯金だけでは足りないことが分かりました。
さっきまで嬉しそうだった妹は、すっかり肩を落としています。
私自身、生活に余裕があったわけではありません。それでも、妹の夢を応援したい気持ちが勝ちました。
「……足りない分、私が貸そうか?」
「えっ、本当に?ごめんね。絶対に返すから!」
こうして私は、妹に15万円を貸しました。
毎年届く手紙と、減らない残額
しばらくして、妹から一通の手紙が届きました。
封筒には千円札が1枚。便せんには近況と、借りたお金をこれから返していくという言葉が書かれていました。
そして最後に、こんな一行がありました。
「残り149,000円」
最初の返済です。少額でも約束を覚えていてくれたことが嬉しく、その手紙は大切にしまいました。
ところが、翌年届いた手紙には、お札が入っていません。
「今年もがんばっています!」という明るい近況報告の最後には、また同じ数字。
「残り149,000円」
その翌年も、さらに翌年も同じでした。
「いや、少しは返してよ…」
思わず独り言が出ます。妹のことは応援していますが、私だってお金に余裕があるわけではありません。
それでも妹は、毎年欠かさず手紙を送ってきます。近況は楽しそうに書かれているのに、返済額だけは一向に変わりません。
いつしか私は、手紙を読むたびにため息をつき、引き出しにしまうようになりました。
10年分の手紙を並べて気づいたこと
妹が引っ越してから10年になるころ、私は引き出しを整理していました。
そこから出てきたのは、妹から届いた10通の手紙です。
懐かしくなって、居間のテーブルに古い順から並べてみました。
そして、思わず笑ってしまいました。
どの手紙の最後にも、同じ数字がきっちり書かれているのです。
「ちょっと……全部149,000円じゃない!」
毎年見ていたので、返済額が変わっていないことは知っていました。それでも10通を並べると、さすがにおかしくなってきます。
たった千円しか返していないのに、残りの金額だけは律儀に書き続ける妹。
お金のことでは散々もやもやしたはずなのに、楽しそうな近況報告と変わらない数字を交互に眺めていると、つい笑ってしまうのです。
もちろん、返さなくていいと思ったわけではありません。ただ、妹らしい妙な律儀さに、怒る気持ちも少し薄れていました。
それから数日後、11通目の手紙が届きました。
封筒を開けると、久しぶりに千円札が1枚入っています。
便せんには、こう書かれていました。
「ようやく少し仕事が入るようになりました。残り148,000円」
「あっ、減ってる!」
思わず声に出して笑いました。
10年間ほとんど動かなかった数字が、ようやく千円だけ減ったのです。
完済までは、まだまだ遠そうです。
それでも私は、その11通目を10年分の手紙の隣に、そっと並べました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














