「私はちゃんと並んでたんだから」ホテルの海鮮コーナーで家族を割り込ませた女性客。だが、最後に目にした光景
数に限りのあるアワビ
旅行先のホテルで、私がいちばん楽しみにしていたのは朝食でした。
そのホテルは海鮮が評判で、私もそれを目当てに宿を選んだのです。
朝食会場が開くと、海鮮コーナーにはあっという間に長い列ができました。
氷を敷いた台には、ホタテやアワビがずらり。
どちらも数量限定で、なくなり次第終了すると入口で案内されていました。
私も列に並び、少しずつ順番が近づくのを待っていました。
ようやくあと少しで私の番というときです。
前のほうに並んでいた年配の女性客が、突然振り向いて手招きを始めました。
「ほら、こっちこっち!お皿持って並んで」
すると、会場のあちこちから家族らしい人たちが集まってきました。
娘さんらしい女性やその夫らしい男性、孫らしい若い人たちまで、次々と女性客のところへ入り込んだのです。
当然、後ろで待っていた人たちは困惑していました。
私の後ろにいた女性が、遠慮がちに声をかけました。
「あの、すみません。みんな並んで待っているんですけど…」
すると、年配の女性客は不満そうに振り返りました。
「家族の分を取るだけなんだから、いいでしょう。私はちゃんと並んでたんだから」
そう言うと、もうこちらには目も向けません。
呼ばれた家族も台の前に集まり、あれがいい、これもおいしそうと話しながら、ゆっくり海鮮を選び始めました。
その間にもアワビはどんどん減っていきます。
ずっと順番を待っていた私は、食べられなくなるのではないかと気が気ではありませんでした。
最後尾に並び直した家族
そのときです。
列の様子を見ていた制服姿の男性スタッフが、家族のそばへやってきました。
「申し訳ありません。お一人ずつ並んでお取りいただいております」
年配の女性客は、納得できない様子で言い返しました。
「えっ?だって、私はずっとここに並んでたのよ?」
スタッフは落ち着いた声で続けました。
「はい。ただ、ご家族の方も順番にお並びいただくようお願いします。最後尾からお並びください」
女性客は何か言いたそうに口を開きましたが、周囲の視線に気づいたのか、そのまま黙ってしまいました。
呼ばれてきた家族は、気まずそうに列の最後尾へ向かいます。
女性客も少しためらったあと、結局その後を追っていきました。
ようやく列が元どおりに進み始め、私はぎりぎりでアワビをお皿に取ることができました。
その後も、並んでいた人たちが順番にアワビを取り、氷の上の数は少しずつ減っていきました。
そして、最後尾に並び直した家族が台の前へ来たときには、アワビはすっかりなくなっていたのです。
「えっ、アワビもうないみたい…」
孫らしい若い人が、残念そうにつぶやきました。
それを聞いた年配の女性客が、驚いた声を上げました。
「うそでしょ!さっきまであったじゃない!」
けれど、周りの誰も何も言いません。
スタッフが終了の札を立てると、女性客もそれ以上は何も言わず、空になった台を見つめていました。
私が印象に残っているのは、スタッフが声を荒らげることなく、最後まで同じルールで案内していたことです。
せっかくの旅行の朝食。誰もが楽しみにしているからこそ、順番を守ることの大切さを感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














