「うちの子だけが悪者にされたんですか」子どものけんかで教師を責めた母親。翌朝、子供が持ってきた連絡帳に書かれていた一文
休み時間のけんかと、夕方の電話
私がまだ小学校の担任をしていたころのことです。
ある日の休み時間、校庭でクラスの男の子二人が、ボールをどちらが先に取ったかで言い争いになりました。
言葉だけでは収まらず、最後はお互いの肩を押してしまったのです。
私は近くで遊んでいた子どもたちから、何があったのか順番に聞きました。
話を整理すると、どちらか一人だけが悪かったわけではありません。
二人にそれぞれ謝ってもらい、その場で仲直りしました。
ところが夕方、職員室に一本の電話がかかってきました。
けんかをした男の子のうち、一人の母親からです。
どうやら息子は家で、けんかをして先生に謝らされたとだけ話したようでした。
「うちの子だけが悪者にされたんですか」
母親の声には、初めから強い怒りがにじんでいました。
「いえ、そうではないんです。二人とも相手の肩を押していて……」
「そんなはずありません。うちの子は手なんか出しません」
私が事情を説明しようとしても、言葉を途中で遮られてしまいます。
「近くにいた子どもたちからも、順番に話を聞きました。二人に謝ってもらっています」
すると母親は、さらに声を強めました。
「先生はちゃんと見ていたんですか」
私は言葉を選びながら答えました。
「そのときの様子は、そばにいた子たちに確認しています。片方だけに謝らせたわけではありません」
「もういいです。校長先生にも話しますから」
電話口の母親の声は、最後まで硬いままでした。
私はもう一度経緯を説明し、「ご家庭でも、お子さんから話を聞いてみていただけますか」と伝えました。
しかし返事はなく、そのまま電話が切れてしまいました。
受話器を置いても、しばらく気持ちが落ち着きませんでした。
私は教頭先生に、経緯と電話でのやり取りを報告しました。
翌朝、男の子が差し出した連絡帳
翌朝、職員室で朝の打ち合わせを待っていると、入り口に昨日の男の子が姿を見せました。
頭を下げて入ってきた男の子は、私の机まで来ると、両手で連絡帳を差し出しました。
「先生、これ。ママから」
私は前日の電話を思い出し、少し身構えながら連絡帳を開きました。
いちばん新しいページには、母親の字で短く書かれていました。
「本人から話を聞きました。昨日は失礼しました」
思わず、その一文をもう一度読み返しました。
昨日はあれほど強い口調だった母親が、家で息子の話を聞き、謝罪の言葉を書いてくれたのです。
張り詰めていた気持ちが、少しずつほどけていきました。
すると男の子が、指をもじもじと組みながら言いました。
「ゆうべ、ちゃんとママに話したよ。ぼくも、ちょっと悪かったって」
「そうか。話してくれて、ありがとう」
私は男の子の頭にそっと手を置きました。
男の子は照れくさそうに笑い、ぺこりと頭を下げて教室へ戻っていきました。
校長先生にも話すと言っていた母親から、その後再び電話がかかってくることはありませんでした。
その日の休み時間、職員室の窓から校庭に目をやると、けんかをした二人がまた一緒にボールを追いかけていました。
その姿を見て、私もようやくほっとすることができたのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














