「1時間ムダにした、謝るのは君だろ」初デートに遅れ、店を間違えたのは私だと責める男。彼の1時間の真相
駅前のカフェの窓際で
男性は、向かいの店の窓際で1時間待っていたと言いました
窓から差しこむ日差しがまぶしくて、席に着くとすぐ、窓のロールスクリーンを下まで下ろしました。生成りの布ごしに、光だけがやわらかく入ってきます。
駅前の小さなカフェの、窓際の2人がけの席。アプリで3週間やり取りした人と、今日が初対面です。土曜のお昼の約束でした。
約束より少し早く着いたものの、前の晩に充電を忘れたスマホは、すぐに電池が切れました。連絡のつかないまま、待つこと1時間。ようやく入ってきた男性は、私の前の席に座るなり言いました。
「君が送ったの、向かいの店だろ。」
「向かいの窓際で、1時間待ってた。」
男性は、ずっとこの店の入口を見ていたと言いました
遅れたことを謝る言葉は、ひとつもありません。いくら待っても私が来ないので、こちらの店をのぞいてみたら私がいた、と言うのです。
「ずっと、この店の入口を見てた。」
「1時間ムダにした、謝るのは君だろ。」
店の名前のことを責められ、私は小さく頭を下げて謝りました
「店の名前くらい、ちゃんと送ってよ。」
このお店を選んで、名前を送ったのは私です。どこかで打ち間違えたのかもしれません。電池の切れたスマホでは、送った文面を見返すこともできませんでした。店に入るときは地図ばかり見ていて、細い通りの向かいにどんなお店があるのかも、私は知りません。
1時間待ったのは私の方なのに、気づけば小さく頭を下げていました。
「すみませんでした。」
謝ったのは私の方でした
向かいの店を見ようと、私はスクリーンの引きひもを引きました
男性は椅子の背にもたれ、腕を組んだまま言いました。
「おかげで、コーヒー2杯も飲んだよ。」
向かいに、どんなお店があるのだろう。男性が1時間いたという窓際は、ここから見えるはずです。私は引きひもを引いて、スクリーンを上まで上げました。
向かいの店はシャッターが下り、本日休業の貼り紙がありました
細い通りをはさんだ向かいに、お店の正面が見えました。灰色のシャッターが、窓も入口もまとめてふさいでいます。前には、たたんで重ねたテラスの椅子と、丸いテーブル。
シャッターには「本日休業」と書かれた紙が貼られ、下の端には落ち葉が吹きだまっています。どう見ても、今日は営業していないようでした。
「向かいのお店は、開いていましたか?」
男性は窓の外を見たまま、頬に汗をにじませています。
男性はスクリーンを下ろし、ひもを握ったままうつむきました
「裏の席に、通されて……。」
向かいの店は、両隣の建物に挟まれた細長い造りです。通りに面した正面にしか窓はなく、奥の席からこちらの入口が見えるとは思えません。それに、さっきは窓際で待っていたと言っていたはずです。
「裏の席から、入口は見えません。」
男性は何か言い返そうとしましたが、言葉が続きません。やがて手を伸ばし、スクリーンを下まで引き下ろしました。しばらく黙り込んだあと、寝坊したんだ、と小さくつぶやきました。
話を聞くと、遅刻を隠すために作り話をしたのだそうです。向かいの店は地図で見ただけで、実際には入ってもいませんでした。私を責めていた言葉が、すべて嘘だったと分かりました。
さっきの『すみません』は、取り消します。そう告げて、私は席を立ちました。初めてのデートは、そこで終わりです。
席を離れるときに振り返ると、男性は下ろしたスクリーンの前で、引きひもを握りしめたままうつむいていました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














