「もう少し玄関から離れて待ってもらえますか」届けるたびに増えていった細かな要望。私が困ってしまった理由とは
玄関から少し離れてください
宅配の仕事をしていたころ、担当していた住宅街に、少し対応の難しい家がありました。
初めて荷物を届けた日のことです。
インターホンを一度押し、玄関の前で待っていると、しばらくしてドアが細く開きました。
「もう少し玄関から離れて待ってもらえますか」
突然そう言われ、私は慌てて一歩後ろへ下がりました。
「失礼しました」
荷物を渡すために近づこうとすると、今度は「そこに置いてください」と玄関脇を指されます。
人との距離が気になる方なのかもしれない。そう考え、その日は言われた通りに荷物を置いて帰りました。
それだけなら、特に気になることではありませんでした。
届けるたびに増えていったこと
ところが翌週、再び同じ家への荷物を担当しました。
前回のことを覚えていた私は、インターホンを一度だけ押し、玄関から少し離れた場所で待ちました。
するとドアが開くなり、今度はこう言われました。
「そんなところに立たれると、外から家の中が見えるでしょう」
「申し訳ありません」
位置を変えると、今度は荷物の置き場所について細かく指定されました。
その次に届けたときには、「インターホンを押してから少し待ってほしい」と言われました。
急かしているつもりはなくても、相手にはそう感じられたのかもしれません。
できるだけ要望に合わせようと思い、その次はインターホンを押したあと、十分に時間を置いて待ちました。
ところが今度は、ドアを開けた相手から「ずっと玄関の前に立たれていると気になる」と言われてしまったのです。
言われたことに気をつけると、別のところを指摘される。その繰り返しでした。
営業所で相談することに
私は営業所に戻ったあと、配車を担当している先輩に事情を話しました。
「前に言われたことを直しても、次に行くと別のことを言われるんです」
先輩は少し考えてから、その住所へのこれまでの配達記録を確認してくれました。
どうやら私だけではなく、以前に担当した人も、受け渡し方や待つ場所について要望を受けたことがあるようでした。
「無理に全部合わせようとしなくていいよ。できる範囲で対応して、難しかったら営業所に連絡して」
そう言われて、少し肩の力が抜けました。
その後、その家の荷物は担当者を固定せず、営業所内で状況を共有しながら対応することになりました。
相手にも相手なりに気になる理由があったのだと思います。ただ、その場で初めて聞く細かな要望に、一人で毎回答え続けるのは難しいものです。
「気をつければ大丈夫」と思っていた私も、どこまで自分だけで対応するべきなのかを考えるようになりました。
宅配は荷物を届ければ終わり、という仕事ではありません。それでも、すべての要望を一人で抱え込む必要はないのだと、その家への配達を通して知りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














