「まず謝ろう」引越しで段ボール20箱を運び終えた夕方。苦情を覚悟した私が玄関で聞いた思わぬ一言
廊下を埋めつくした段ボール
40代の私が家族と新しい家に引っ越したのは、3年前のことです。
朝から作業の人たちが出入りし、冷蔵庫やたんすなどの大きな荷物が次々と運び込まれていきました。
声や物音もそれなりに響いていて、私は作業の合間にも外の様子が気になっていました。
廊下には段ボールが積み上がり、最後の1箱が運び込まれたところで数えると、全部で20箱。夕方には、私の腕も腰もすっかり重くなっていました。
「今日、ずいぶん音を立てちゃったね。ご近所、大丈夫かな」
「引っ越しなんだから、ある程度は仕方ないんじゃない?」
奥の部屋でカーテンをつけていた夫は、あまり気にしていない様子です。
けれど私は落ち着きませんでした。ご近所へのあいさつも、まだ一軒も済ませていなかったからです。
夕方に鳴ったインターホン
作業が終わったころ、インターホンが鳴りました。
画面を見ると、玄関の前には女性2人と男性1人の、合わせて3人が立っています。
みんな真面目な表情に見えて、私は一気に緊張しました。
「来た。やっぱり今日の音かな…」
「まだ何も言われてないでしょ」
夫の声を背中で聞きながら、私は段ボールの間をすり抜けて玄関へ向かいました。
「とにかく、まず謝ろう」
朝から騒がしくしてしまったことを謝って、それからきちんと挨拶をしよう。そう考えながらドアを開け、私はすぐに頭を下げました。
「今日は朝からうるさくしてしまって、すみませんでした」
すると、少しだけ間がありました。
顔を上げると、3人は驚いたように顔を見合わせています。
やがて真ん中にいた女性が、小さな紙袋を差し出しました。
「いえいえ。これからよろしくお願いします。困ったことがあったら、夜でもいいからピンポンしてね」
そこで初めて、3人が両隣と向かいの家の人たちだと分かりました。
苦情を言いに来たのではなく、そろって挨拶に来てくれただけだったのです。
「あ…こちらこそ、よろしくお願いします」
身構えていた私は、拍子抜けしながらもう一度頭を下げました。受け取った紙袋には、小さなお菓子が入っていました。
身構えていたのは私だけだった
翌週には、ゴミ出しのルールや自治会のことまで丁寧に教えてもらいました。
最初のインターホンであれほど緊張していたのが、自分でもおかしくなるほどです。
今でも家のインターホンが鳴って私が少し構えると、夫が笑います。
「また謝る準備してるでしょ」
引っ越し初日、苦情が来るのではないかと心配していた私。けれど玄関の向こうで待っていたのは、想像していたものとはまったく違う、ご近所からの温かい挨拶でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














