「車を見かけたから追いかけたの!」慎重に尾けてきたというママ友→悪びれない笑顔に総毛立った
誰にも言っていない店を知っていた
その日は、平日に半休をとってひとりで遠出をした帰りだった。家から車で三十分以上離れた隣町のカフェで、前から気になっていた限定のケーキを食べてきた。
誰にも予定は伝えていない、自分だけのささやかなご褒美のはずだった。
翌朝、娘の幼稚園の送迎で、同じクラスのママ友とすれ違った。いつもにこやかで感じのいい人だ。その彼女が、何気ない世間話のような口ぶりで切り出した。
「昨日のカフェの限定ケーキ、おいしそうだったね」
耳を疑った。
あの店に行ったことを、私は本当に誰にも話していない。家族にすら、その日どこへ行ったかは言っていなかった。
「なんで、その店のこと知ってるの?」
動揺を隠せないまま訊き返すと、彼女はますます嬉しそうな顔になった。
三十分の道を尾けられていた
彼女は少しも悪びれず、明るい声で答えた。
「車を見かけたから追いかけたの!」
偶然うちの車が走っているのを見つけて、どこへ行くのか気になったのだという。
それで隣町まで、気づかれないように後ろをついて運転してきたのだと、楽しげに打ち明けた。
「ちゃんと最後までついていけたよ」
そう言って笑う顔には、後ろめたさのかけらもなかった。私が固まっても、彼女は微笑んだまま反応を待っている。
叱るべきだと思っても、あまりに自然な笑顔を前に、言葉が喉で詰まった。
三十分以上の道のりを、私は一度も後続の車に気づかなかった。信号待ちのたびに少し離れ、見失わない程度に距離を保つ。
それだけ慎重に尾けてきたということだ。にこやかな顔の裏側にあるものを想像して、二の腕が総毛立った。彼女がこの行動を「悪いこと」だと一切思っていないのが、何よりも恐ろしかった。
今は挨拶だけで離れている
あの朝から、彼女とはまともに話していない。登園の時間をずらし、顔を合わせても会釈だけして、すぐにその場を離れる。
彼女はいつもどおり笑って手を振ってくるが、その笑顔こそが、私にはいちばん不気味に映るようになった。
ひとりで車を出すたびに、バックミラーを何度も確認する癖がついた。同じ車種を見かけるだけで、息が止まりそうになる。
今もどこかで見られているのではないかという感覚が、なかなか抜けない。
悪意があるなら、まだ身構えようがある。でも彼女には、それがない。
「気になったから」だけで人の後を三十分尾けられる人が、すぐ近くで毎朝笑っている。その事実だけが、ずっと胸の底に冷たく沈んだままだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














