「本気じゃなかったから」我が子が勝つたび言い訳したママ友。だが、息子の活躍を見て状況が一変
頼れる存在だった人
うちの子が剣道を習い始めたとき、同じ道場に3つ年上の、抜きん出て上手な子がいた。その子の母親は剣道のことを何でも知っていて、初心者の私にいろいろ教えてくれた。
「試合はね、間合いの取り方が全部なの」
稽古のたびにそう語る彼女を、私は素直に尊敬していた。竹刀の握り方も、礼の作法も、彼女が教えてくれた。
いつか、うちの子もあんなふうに強くなれたらと思っていた。
道場の帰り道、二人で子どもの話をするのが、私のささやかな楽しみでもあった。
その関係が変わり始めたのは、うちの子の成績が上がってきた頃だった。
負けを認めない言葉
春先の試合で、うちの子があの上手な子に勝った。実力差が縮まっていたのだと、私は静かに胸を熱くした。けれど彼女の受け止め方は、まったく違っていた。
「怪我してたから今日は負けただけ」
そう言って、彼女は小さく肩をすくめた。続けて出てきたのも、似たような言葉だった。
「ほんと、調子が悪い日に当たっちゃったわね」
うちの子が勝つたび、彼女は必ず理由を持ち出した。
「最近練習できてないから」
「本気じゃなかったから」
まるで、勝ったことそのものをなかったことにされているようだった。
正直、いい気はしなかった。せっかく我が子が手にした一本を、まるで偶然のように扱われるのは、親として悔しかった。
けれど、まともに張り合えば消耗するのは目に見えていた。あれだけ世話になった相手と、子どもの勝敗で角を立てたくもなかった。
私はあえて何も言わず、少し距離を置いて見守ることにした。
春に積み上がった連勝
子どもは、言い訳とは無関係に強くなっていった。次の試合も、また次の試合も、あの年上の子を相手に勝ち続けた。
気づけば、その春だけで三度。誰の目にも、もう実力だとしか映らなかった。
三度目の勝利のあと、彼女が遠くからこちらを見ていた。けれど、もう「練習してないから」とは言わなかった。
言いかけて、飲み込んだように口を閉じた。代わりに小さく頭を下げ、足早に防具をまとめて帰っていった。
うちの子は、汗だくのまま私のところへ駆けてきた。
「また頑張ろうね」
私がそう声をかけると、子どもは大きくうなずいた。近くにいた別のお母さんたちも、笑顔で拍手を送ってくれる。
その輪の中に、彼女の姿はもうなかった。
「ほんと、努力が実ったね」
かけられた言葉に、私はただ頭を下げた。言い負かしたわけではない。
ただ、積み上げた結果だけが、どんな言い訳よりも雄弁だった。距離を保ったまま、私の心は不思議と軽くなっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














