「指輪は、いちごの下でお願いします」プロポーズ用のケーキを預かった私たち。数日後、常連のカップルが再び来店して見たのは
注文票の備考欄に書いたひと言
20代のころ、私はケーキ屋で働いていました。店にはよく二人で来てくれる常連のカップルがいて、いつも楽しそうに話している姿が印象に残っていました。
ある日の午後、彼のほうがひとりで来店し、記念日のケーキを予約したいと言いました。
私が注文票を用意し、大きさなどを確認していると、彼がおもむろに小さな箱を取り出しました。
「あと、これなんですけど…」
ふたを開けると、中には指輪が入っていました。思わず目を見開いた私に、彼は少し照れたように続けます。
「ケーキに入れてもらえますか」
「はい。どのあたりにしましょうか?」
「指輪は、いちごの下でお願いします」
私は忘れないよう、注文票の備考欄に「いちごの下」と書き込みました。
事情を聞いた50代の店長が指輪を預かり、その日まで金庫で保管することになりました。
箱を渡すだけなのに、手に力が入った
それから数日、休憩中にそのケーキの話になることがありました。
「受け取るとき、緊張するだろうね」
「こっちまで緊張しそう」
20代の同僚とそんな話をしながら、記念日の前日には、いちごをどこに置くのか改めて確認しました。
当日の朝、店長がケーキを仕上げ、小さな袋に入れた指輪を真ん中のいちごの下へそっと入れました。
夕方になると、カップルが二人でやって来ました。
彼はいつもと変わらない様子で彼女と話しています。
私は完成したケーキの箱を両手で持ちました。普段なら何度もしている受け渡しなのに、この日ばかりは中身が気になり、指先に力が入ります。
「ありがとうございます。また来ますね」
彼は笑顔で箱を受け取ると、彼女と一緒に店を出ていきました。
ドアが閉まったところで、私はようやく息を吐きました。近くにいた同僚も同じだったようで、顔を見合わせます。
「手が震えそうだったの、私のほうでした」
そう言うと、同僚が笑いました。
そして次の週、二人はまた店に来てくれました。
ショーケースを見ている彼女の左手には、あの指輪が光っています。
それに気づいた店長が、奥で小さくガッツポーズをしていました。30代になった今でも、あの日の緊張とほっとした気持ちはよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














