「腕はプロ級、工賃2万5千円ね」吊り棚を付け、主婦の私を見下す夫の友人。だが、私が棚に置いた物で言葉を失った
土曜の昼、新しい吊り棚の前で
夫の友人は、付けた吊り棚の工賃2万5千円を求めました
夫の友人は、台所に立つなり、ダイニングの椅子に座る夫へ手のひらを差し出しました。
「腕はプロ級、工賃2万5千円ね。」
4月の土曜の昼、新築から約2年が経ったわが家です。
先週、夫の友人は『プロに頼めば5万円』と言って、台所の壁に吊り棚を付けてくれました。
事前に工賃は2万5千円と決めており、今日はその受け取りに来たのです。ついでに洗面所のタオル掛けも見てやると、作業用のエプロンを着け、工具箱を提げて来ました。
夫が財布を出しました。お金を渡す前に、と私はずっと気になっていたことを口にしました。
「カップが、勝手に左へ寄るんです。」
付けてもらった次の日から、カップを並べるたびに左へずれそうになり、まん中に安定して置けないのです。棚板がわずかに傾いているように感じていました。
友人は、主婦の私の置き方が雑だと見下しました
夫の友人は、あきれたように肩をすくめました。
「カップ2つで、棚が下がるかよ。」
「主婦は昼寝ばかり。置き方が雑なんだ。」
私は家で、経理の事務の仕事をしています。
それでも夫の友人は、私を主婦と呼んで見下します。昼寝ばかりしているわけではありません。
友人は、棚は水平で、何度も測ったと言い切りました
夫の友人は両手を腰に当て、私の目を見て言い切りました。
「棚は水平。水準器で何度も測った。」
「この新築の家に、傾きなんてない。」
取り付けの日も、プロ以上だと胸を張っていた人です。
腕自慢の、夫の恩人
夫の恩人を前に、私は言い返す言葉をのみこみました
「傾いてたら、全部俺のせい。」
「工賃なしで、やり直すよ。」
さあ2万5千円、と夫の友人は、もう一度夫へ手のひらを出しました。
言い返す言葉は、のどまで来ていました。
けれど引っ越しの日、軽トラックを出して、丸一日荷物を運んでくれたのは夫の友人です。
夫はいまも、あの日の恩人と呼んでいます。夫の前で、その人と角を立てたくはありません。
私はうつむいて、両手を握りました。
友人の水準器を棚に置くと、泡は右の端に寄りました
床の工具箱の上から、私は夫の友人が持参した水準器を取りました。
透明な管を、灰色の細い台に載せた道具です。管の中には、黄緑の液と泡がひとつ。それを棚板の手前のふちに、そっと横にして置きます。
「水平なら、泡はまん中に来ます。」
泡は、すうっと右へ流れ、管の右の端に張りついて止まりました。
棚の右が高いのです。カップが左へずれそうになっていた理由は、ここにありました。
夫の友人は棚を見上げたまま、眉間にしわを寄せました。
友人は、差し出した手をエプロンのポケットに押し込みました
「この家の床が、傾いてるんだよ!」
「床は引き渡しの時に測ってあります。」
2年前の引き渡しの日、床の傾きは業者さんに確認してもらっていました。もちろん、それだけで今の床の状態まで証明できるわけではありません。しかし、壁に取り付けられた棚が水平でないことは、水準器ではっきりしています。棚に載せていたのも、付けてもらった日からカップ2つだけです。
『来週の土曜に、工賃なしでお願いします』と私が言うと、夫は財布を開かないままテーブルに置き、その上に手をのせました。最初に約束した工賃は、棚をきちんと直してもらってから支払うことにしました。
夫の友人は、差し出していた手のひらを、そのままエプロンのポケットに押し込みました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














