「ジンジャ一は身体を暖めてくれるスパイスだから、寒い季節のお菓子にも取り入れられたのだと思います。暖炉のある部屋にジンジャーブレッドを飾ったツリーを置いておくと、部屋中がスパイスのいい香りに包まれます。部屋を暖める効果もあるみたいですね」と敦子さん。「ブロ一ドハ一スト」では、かわいいデコレ一ションのジンジャ一マンブレッドとモミの木の形のビスケットを焼いていて、12月には店内のツリ一に飾って販売します。
そして、幸運を運んできてくれるお菓子として親しまれているのが「ミンスパイ」。これは、16世紀エリザベス朝まで遡ることができる歴史的な伝統菓子です。キリストが眠るゆりかごを表しているという楕円形が特徴的なこのお菓子は、バイの中に「ミンスミート」が詰められたお菓子。ミンスミートとは、レーズン、オレンジピール、すりおろしたリンゴ、シナモン、ナツメグ、クロープ、ラム酒、スエット(牛脂〕を混ぜたもの。これを2週間ほどじっくり熟成させてから使います。
「ミート」と名が付いているのは、16世紀のレシピでは挽き肉を使用していたため。きっと保存食の意味もあったのでしょう。挽き肉を腐らせないために、スパイスやドライフルーツを入れていたけれど、時代とともに挽き肉の割合は減っていき、現在はスエット(牛脂)を入れるのがその名残に。
「ブロードハースト」のミンスパイは、スパイスやドライフルーツのほかに、イギリスらしく黒ビールとシェリー酒をプラスします。「ほろ苦さやコクが出て、味がふくよかになるんですよ」とピーターシェフ。「手に入りにくいせいもあり、近頃はスエットを省略されているお店も増えていますが、これを入れないとミンスパイじゃないという気がして。うちでは、芦屋のシャルキュトリー『メッグライクスダ』さんで、スエットを手配しています。」
ミンスパイには、クリスマスから十二夜(公現節)までの間に1日1個ずつ食べ、合計12個のバイを食べると、新年に幸運が訪れるという言い伝えも。「わたしの実家では温め直して、生クリームと絡めて食べていました。モルドワイン(ホットワイン)やシェリ一酒と合わせて楽しむのもいいですよ。」とシェフ。「シェフは子供の頃、1日1個しゃなくて、2、3個食べたりしていたみたいです(笑)」とマダムに言われてシェフも苦笑い。
tend Editorial Team
2012.12.03(Mon)
イギリス流のクリスマスはいかが?「ブロードハースト」
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