「高校、一緒でしたよね」妻のママ友が私の同級生だった。だが、思い出せず固まった私を救った妻の一言
洗面所へ向かう途中で呼び止められた
帰宅すると、玄関に何足もの靴が並んでいました。リビングには妻のママ友が四人ほど集まっています。
私は皆さんに軽く挨拶をして、そのまま奥へ向かいました。キッチンにいた妻が「ごめんね、今日はちょっとにぎやかで」と小声で言いましたが、別に気にはなりません。うがいをして自分の部屋に入れれば、それでよかったのです。
ところが、洗面所へ向かう廊下で後ろから声をかけられました。
「あの、さっき顔を見たとき、もしかしてと思ったんですけど」
振り返ると、先ほどリビングにいた女性が立っていました。
「高校、一緒でしたよね」
そう言って旧姓を聞かされましたが、私にはまったく覚えがありませんでした。
「ああ…」
何か言わなければと思うのに、その先が出てきません。「覚えています」と言えば嘘になりますし、「覚えていません」とはっきり言うのも気が引けました。
そんな私を見て、女性は少し笑いました。
「覚えてないですよね。三年のとき、同じクラスだったんです」
そう言われても、やはり顔と記憶が結びつきません。申し訳なさと気まずさで、その場から動けなくなっていました。
麦茶を持った妻がやってきた
そこへ、麦茶の入ったコップを持った妻が廊下へ出てきました。
ちょうど「同じクラスだったんです」という言葉が聞こえたらしく、妻は私たちを見比べました。
「え、同級生なの、じゃあ次はみんなでランチね」
あまりにも明るく言うので、女性も笑いました。
「本当、世間って狭いね」
妻は私が相手を思い出せず困っていることまでは分かっていないようでした。
それでも、その一言で張りつめていた空気がほどけました。
女性も「じゃあ、また」とリビングへ戻っていきました。
しばらくすると、向こうから「旦那さんと同級生だったの?」という声が聞こえ、また笑い声が続きました。誰かが私を責めているわけではありません。
私はようやく洗面所へ入り、うがいを済ませて自分の部屋へ戻りました。
妻に正直に話してみると
その日の夕食で、妻があらためてその話をしました。
「あの人、あなたのこと覚えてたんだね」
そこで私は、ようやく正直に言いました。
「でも、俺は全然思い出せなかった」
妻は驚くでもなく、「そんなこともあるでしょ」と笑いました。
そして少ししてから、思い出したように付け加えました。
「ランチも、別にあなたまで無理して来なくていいからね」
どうやら廊下では、その場の勢いで言っただけだったようです。
結局、その人のことは今も思い出せていません。ただ、次に顔を合わせることがあれば、今度はこちらから普通に挨拶できそうです。
覚えていないことを取り繕おうとして固まっていた私にとって、妻の何気ない一言は、ずいぶん助けになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














