「ちゃんと返すから」弟のために作った150万円の借用書。母と疎遠になった私が、今も連絡できずにいる理由
弟のために作った150万円の借用書
弟が進学したのは私立の専門学校でした。うちはひとり親の家庭で、弟は奨学金を借りて通い、卒業後は働きながら自分で返済していました。
返済するものは二種類あり、そのうち片方には利子がついていました。当時、働き始めて数年だった私には、しばらく使う予定のない貯金がありました。
「利子がつくほうだけでも、私が出そうか」
そうして、私は150万円を立て替えることにしました。
金額と返済方法を書いた借用書を作り、二人で一枚ずつ持ちました。私の分は、家の引き出しの奥へしまいました。
「ちゃんと返すから」
「うん。急がなくていいよ」
そのときは、それで話は終わったつもりでした。弟の負担が少し軽くなれば、それでいいと思っていたのです。
ところがその後、母に言われたあることをきっかけに、私は母と疎遠になりました。
弟と何かあったわけではありません。ただ、弟と顔を合わせるのは母の家がほとんどでした。母のもとへ行かなくなると、弟とも自然に会わなくなっていきました。
借用書は、引き出しの奥に残ったままです。
連絡を取れば、返済について話すことはできます。それでも母とのことまで思い出してしまい、私はなかなか弟に連絡できずにいました。
「親の面倒を見てもらっている」と考えることにした
それから三年ほどたったころ、私は自分の中で、こう考えるようになりました。
「親の面倒は、弟が見てくれていると思えばいいのかな」
実際に弟が今、母のことをどこまで支えているのかは分かりません。ただ、私はそう考えることにしたのです。
それで完全に納得できたわけではありません。
「それでいい」と思う自分がいる一方で、「150万円、まだ返ってきていないな」と思う自分もいます。
一度だけ、友人にこの話をしたことがあります。
「弟さんに連絡してみたら?」
「うん……そのうちね」
「お金の話じゃなくてもいいんじゃない?」
「そうだね」
友人の言うことは分かりました。それでも、私はまだ弟に連絡していません。
弟が今どうしているのかも知りません。元気でいてくれればいいと思っています。
引き出しを開ければ、今も150万円の借用書があります。金額も返し方もきちんと決めたのに、家族の関係が変わると、お金の話だけを予定どおり進めることはできませんでした。
返済の話は、弟へ連絡するきっかけにもできます。それなのに、いざ連絡しようとすると手が止まります。
引き出しを閉めるたびに、私はまた「そのうち連絡しよう」と思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














