震える店員さんをもう見ていられない。「謝ればいいってもんじゃないぞ」と詰め寄る男性に、僕が思わず口を開いた瞬間
謝るたびに強くなっていった声
金曜の夕方、仕事帰りにコンビニへ寄った。おにぎりとお茶を手にレジへ向かうと、3〜4人ほどの列ができていて、僕はその最後に並んだ。
会計中だったのは、40代くらいの作業着姿の男性だった。レジにいた若い店員さんの名札には、「研修中」の札がついている。
まだ袋詰めに慣れていないのか、カップ麺と缶を前に何度か手が止まっていた。
すると、男性がいら立った声を上げた。
「遅いって言ってんだろ」
店員さんは肩をすくめ、「申し訳ございません」と頭を下げた。急いで缶を袋へ入れようとしたものの、袋のふちに当たり、カンッと音がする。
「申し訳ございません。すぐにお入れします」
「謝ればいいってもんじゃないぞ」
店員さんがもう一度頭を下げると、男性はレジ台のほうへ身を乗り出した。
「早くしろ!」
店員さんの手は、袋を持ったまま小さく震えていた。
列に並んでいた人たちも黙ったままだった。僕の少し前にいた年配の男性は視線をそらし、後ろの女性もかごの持ち手を握ったまま動かない。
列の後ろから声をかけた
このまま見ているのもつらかった。ただ、こちらまで怒鳴れば余計に店員さんを困らせそうだった。
僕は列の後ろから、男性に届くくらいの声で言った。
「あの、急いでるなら自分で入れたほうが早くないですか。店員さん、ちゃんとやってますよ」
男性が振り返り、僕をにらんだ。
そのとき、後ろにいた女性も小さくうなずいた。
「…そうですね」
男性は周囲を見回したあと、何か言いかけたものの口を閉じた。そしてレジ台に残っていたカップ麺と缶を自分で袋へ入れ始めた。
袋の口を強く握ると、そのまま何も言わずに店を出ていった。
震えていた手が少しずつ戻った
自動ドアが閉まると、品出しをしていた別の店員さんがレジへやってきた。
「大丈夫?何があったの?」
若い店員さんはまだ緊張しているのか、すぐには答えられなかった。僕は横から、男性が謝罪をしても同じ言葉を繰り返していたことを簡単に伝えた。
別の店員さんは心配そうに若い店員さんを見たあと、少しして持ち場へ戻っていった。
やがて僕の番になった。
若い店員さんは大きく息を吐いてから、おにぎりとお茶を受け取った。バーコードを読む手は、まだ少しぎこちない。
「お待たせして、すみません」
「大丈夫ですよ。慌てなくていいですよ」
「……ありがとうございます」
店員さんは少しだけ表情をゆるめ、おにぎりがつぶれないよう、お茶の横へそっと入れてくれた。
店を出るころには、さっきまで張りつめていたレジ前の空気も、少しずつ元に戻っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














