「中学も、同じ学校ですね」夫と前夜に話した娘の進学先を、あいさつを返さない隣人に言い当てられた
あいさつを返してくれない隣人
夫と幼い娘の3人で、分譲地の一戸建てに引っ越したのは、ある春のことでした。
隣は旗竿地で、奥にある家から道路へ出るには、わが家の横に延びる細い通路を通ります。
隣の家も同じ時期に越してきて、娘と同い年の子どもがいると知り、最初は親しくなれたらと思っていました。
庭にいるとき、通路を歩く隣の女性に声をかけました。
「こんにちは。お出かけですか?」
ところが、返事はありません。女性は私と同じくらいの年齢に見えましたが、こちらを見ずに歩いていきます。
何度あいさつしても同じでした。
このまま子ども同士が同じ学校に通うことになったら、うまく付き合えるだろうか。
そんな不安から夫に相談し、娘を隣町の小学校へ通わせる手続きをしました。
離れた小学校を選んだはずなのに
入学を控えた3月のことです。
庭で水をまいていると、隣の女性が通路で立ち止まりました。
そして突然、娘が入学する小学校の名前を口にしたのです。
私は驚きました。それまで一度も返事をしてくれなかった女性の声を、初めて聞いたからです。
しかも、なぜ娘の進学先を知っているのでしょうか。
さらに驚いたのは、4月の入学式でした。
体育館の保護者席に座っていると、3列前に見覚えのある女性がいたのです。
あの隣人でした。
隣の家の子も、娘と同じ小学校に入学していたのです。
結局、6年間で子ども同士が同じクラスになることはありませんでした。
娘は毎日元気に通学していましたが、隣の女性は学校でも家の横の通路でも、相変わらず無言のままでした。
夫婦だけで話した翌朝の一言
娘の小学校卒業が近づいた冬の夜、娘が寝たあと、夫と中学校の進学先について話しました。
窓もカーテンも閉め、声を落としての会話でした。
「中学は、どうする?」
「学区の外の、少し離れたところにしたいな」
「そうか。自転車通学になるね。あの子には僕から話すよ」
「うん、お願い。まだほかの人には言わないでね」
「分かってる。誰にも言わないよ」
その翌朝です。
ゴミ袋を持って玄関を出ると、家の横の通路に隣の女性が立っていました。
普段ならそのまま歩いていくのに、その日は足を止め、こちらを見ています。
「おはようございます」
私が声をかけると、女性は静かに口を開きました。
「中学も、同じ学校ですね」
「……え?」
思わず聞き返しました。
進学先について話したのは、昨夜のことです。夫のほかには誰にも話していません。
「どうして……知っているんですか?」
しかし、女性は答えませんでした。
そのまま向きを変え、通路を歩いていってしまったのです。
越してきて10年。私が聞いた、あの人の2度目の言葉でした。
結局、中学校の入学式にも隣の家の子はいました。
3年間、クラスはずっと別々でした。娘は部活動を楽しみ、何かをされたことも一度もありません。
それでも、隣の女性がどうやって進学先を知ったのか、今も分からないままです。
「高校、まだ決めてないんだよね」
今朝、娘は食卓でそう言って、かばんを持って出かけました。
しばらくすると、窓の外から足音が聞こえてきました。
隣の女性が、いつものように通路を歩いています。
通り過ぎるとき、女性は一瞬だけ、こちらの窓に目を向けました。
その視線が、どうしても気になってしまうのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














