「玄関に落ちた実くらい、お宅で掃いてよ」隣家の木の実に悩んだ私。足を滑らせた私のお願いを断った隣人が、翌週にとった行動
毎朝、玄関先に落ちている紫色の実
郵便受けから玄関までの細い通り道には、春になると小さな紫色の実が落ちてきます。
原因は、隣の庭にある木でした。
枝が境界のブロック塀を越えて、わが家の通り道まで伸びているのです。
落ちた実を踏むと、敷石にも靴の底にも紫色のしみが残ります。
私は毎朝、ほうきで実を掃き集めていました。
去年の春、一度だけ隣の奥さんに枝を切ってほしいとお願いしたことがあります。
ところが、60代くらいの奥さんは「自然のことだからね」と笑うだけ。
それ以上は言えず、結局、私が掃除を続けることになりました。
そして今年の春。いつものように玄関先を歩いていると、落ちていた実を踏んで足を滑らせてしまったのです。
幸い転びませんでしたが、履いていた白い靴には紫色のしみがついていました。
ちょうど塀の向こうで奥さんが草むしりをしていたので、思い切って声をかけました。
「すみません。また実が落ちていて、さっき足を滑らせたんです。枝を切っていただけませんか」
奥さんは作業の手を止め、木を見上げました。
「ああ、この木ね。主人が植えた木なの。亡くなってからは、ずっと切っていなくてね…」
大切な木なのだろうとは思いました。
それでも、毎朝掃除をするだけでなく、滑って転びそうになるのは困ります。
「そうだったんですね。でも、こちらまで枝が伸びているので、一度見てもらえませんか」
すると奥さんは、少し不満そうな顔になりました。
「そんなに出ているはずないわよ。毎日庭から見ているもの」
私からは、塀の上を越えてきた枝がよく見えています。
ただ、奥さんのいる場所からでは、こちら側にどれほど伸びているか分かりにくいのかもしれません。
「でも、本当に困っているんです」と伝えると、奥さんは草むしりに戻りながら言いました。
「玄関に落ちた実くらい、お宅で掃いてよ」
その言葉に、私は返事ができませんでした。
去年からずっと掃いているのに。そう思うと、さすがに悲しくなりました。
1通の書面を見た奥さんの反応
このままでは毎年同じことの繰り返しです。
そこで私は、市の窓口に相談して、隣家から枝が越境している場合の決まりを確認しました。
そして、わが家の通り道を覆う枝と、実で汚れた敷石を写真に撮り、枝を切ってほしいというお願いと一緒に1通の書面にまとめました。
翌朝、庭でほうきを使っていた奥さんに、塀越しに声をかけました。
「すみません。これ、ちょっと見ていただけますか」
奥さんは不思議そうな顔で書面を受け取りました。
「こちら側から撮った写真です。枝がどれくらい伸びているか、分かると思います」
写真には、通り道の上まで大きく張り出した枝が写っていました。
「市でも相談したんです。境界を越えた枝は、持ち主の方に切ってもらうようお願いできるそうです。対応していただけませんか」
奥さんは写真をじっと見つめていました。
そして、顔を上げて実際の枝を見上げると、驚いたようにつぶやきました。
「えっ…こんなに出ていたの?」
「はい。うちの玄関から見ると、ずっとこんな状態なんです」
「そうだったの…。こっちからじゃ、わからなかったわ」
奥さんはもう一度写真を見ました。手にしていたほうきがずり落ち、地面に倒れましたが、しばらくそのまま黙っていました。
私もそれ以上は責めず、書面に書いたお願いを改めて伝えました。
翌週、隣の庭には植木屋さんのはしごが立っていました。
伸びていた枝が切りそろえられ、わが家の通り道にも明るい日差しが差し込むようになりました。
通りかかった近所の人からも「明るくなったわね」と声をかけられました。
その後、奥さんは塀越しに私を見かけると、頭を下げてくれました。
「毎朝掃かせていたのね。ごめんなさいね」
「いえ。枝を切っていただけて、助かりました」
それ以上、言い合いになることはありませんでした。
翌年の春には、奥さんが庭に落ちた実を煮て作ったというジャムを、小さなびんに入れて届けてくれました。
あの木は今も隣の庭にあります。ただ、わが家の玄関先に実が落ちてくることはなくなり、敷石に新しい紫色のしみがつくこともなくなりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














