「店員は1人しかいないのか、遅いぞ」早朝のハンバーガー店で怒った男性。だが、常連の女性の一言で救われた
朝6時半、店長が休憩に入った直後
私はハンバーガー店で早朝のパートをしています。
普段は店長と2人で店を回していますが、その朝6時半、店長が10分間の休憩に入ったところで、急にお客さんが続きました。
気づくとレジの前には5人の列。先頭に並んでいたのは、スーツ姿の60代くらいの男性でした。
何度も腕時計を見ていて、急いでいる様子です。
男性が注文したのはコーヒーだけ。
私は会計を済ませて新しくコーヒーを落とし始め、男性には受け取り口で待ってもらいました。
その間に次のお客さんの注文を聞き、奥へパンを焼きに行きました。
レジも調理も私1人。手を止めるわけにはいきませんでしたが、男性には自分の注文を後回しにされたように見えたのかもしれません。
「コーヒー、まだか?それだけなんだけど」
「申し訳ありません。もう少しお待ちください」
急いでカップを取ると、手が滑ってふたを落としてしまいました。
新しいふたを取り出す私を見て、男性はカウンターを指でたたき始めます。奥をのぞき込み、声を大きくしました。
「店員は1人しかいないのか、遅いぞ」
胸がぎゅっと苦しくなりました。お待たせしているのは事実です。でも、これ以上どう急げばいいのか分からず、私は頭を下げました。
列の女性がかけた、思いがけない言葉
そのとき、列の真ん中にいた70代くらいの女性が声をかけました。毎朝来てくれる常連さんです。
「すみません。この方、今お1人で全部やってらっしゃるんですよ。もう少し待ってあげませんか」
女性は私にも向き直りました。
「私の分は後でいいから、慌てないでね」
すると、女性の後ろにいた若い男性も口を開きました。
「僕も急いでないので、大丈夫です」
列のいちばん後ろの人も、「私も待ちますよ」とうなずきました。
男性は振り返って列を見ました。それから、私がパンを包み、コーヒーを注ぐ様子を黙って見ていました。
カウンターをたたく音も、いつの間にか止まっていました。
「お待たせしました」
コーヒーを渡すと、男性は両手で受け取り、小さな声で言いました。
「……さっきは急かして、悪かったな」
「いえ。お待たせしてすみません」
声が少し震えてしまい、私は笑顔を作りました。男性は小さくうなずいて店を出ていきました。
ちょうど休憩から戻った店長に、常連さんが話しかけました。
「店長さん、この方、さっきお1人で頑張ってたのよ。ほめてあげてね」
その言葉を聞いて、張りつめていた気持ちが少し楽になりました。
次の週から、あの男性は毎朝店に来るようになりました。私と店長が並んでいると、少し笑って声をかけてくれます。
「おはよう。今日は2人か、よかったな」
あの日のことを思い出すと、今も少し緊張します。それでも、その一言を聞くたびに、あの朝の張りつめた空気がやわらいでいくように感じます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














