「パンでも焼こうか」と言った翌朝、夫が朝6時から小麦粉を準備。台所で私が告げた事実
「パンでも焼こうか」のひと言が招いた勘違い
2年前、夫と2人で暮らしていたころのことです。
仕事帰りに夕食の買い物を済ませ、台所で買ってきたものを片付けていると、夫が冷蔵庫を開けながら聞いてきました。
「卵もあるし、明日の朝は何食べる?」
「そうだね。じゃあ、パンでも焼こうか」
私は、値引きシールの貼られた食パンの袋を持ち上げながら答えました。
もちろん、トースターで焼くつもりです。
ところが夫は冷蔵庫のほうを向いていて、私が持っている食パンには気づかなかったようでした。
「ほんと?やった!俺も手伝うよ」
「え、手伝うって?」
「何でもいいよ。明日は早く起きるからさ」
パンをトーストするだけなのに、どうしてそんなに張り切っているんだろう。
少し不思議でしたが、夫があまりにうれしそうなので、私は笑いながら「じゃあ、お願いね」と返しました。
実は私は、月に1回パン教室に通っています。夫もそのことを知っていました。
まさか、そのせいで話が食い違っているとは、このときは思いもしなかったのです。
朝6時、エプロン姿の夫が待っていた
翌朝、台所から聞こえる物音で目が覚めました。
寝室の戸のすき間から明かりが漏れ、何かを混ぜるような音が聞こえてきます。
何をしているのだろうと思いながら、パジャマのまま台所へ向かうと、思わず足が止まりました。
夫が私のピンクのエプロンをつけて、作業台の前に立っていたのです。
目の前にはボウルと計量カップ。ボウルには小麦粉が入っていました。
「あ、おはよう!何時からこねるの?6時に起きたよ」
得意げな顔で振り向く夫。時計を見ると、まだ6時を少し過ぎたところでした。
「えっ…こねる?」
「うん。パン作るんでしょ? 粉、これで足りるかな?」
その瞬間、ようやくすべてがつながりました。
夫は、私がパン教室で習っているように、生地からパンを作るのだと思っていたのです。
私は冷蔵庫の横のかごから、前の晩にしまった食パンの袋を取り出しました。
そして、胸の前にそっと持ち上げます。
「あのね……昨日のパンって、これのことなんだけど」
「……え?」
「トースターで焼こうかなって……」
夫は私の手にある食パンと、目の前の小麦粉を交互に見つめました。
それから、自分がつけているピンクのエプロンに目を落とします。
「えっ、ちょっと待って。じゃあ俺、何のために6時に起きたの……?」
その言葉を聞いた瞬間、私はとうとう吹き出してしまいました。
夫もつられたように笑い出し、しばらく2人で笑いが止まりませんでした。
結局、夫はボウルを片付け、エプロンをつけたまま食パンを2枚トースターに入れてくれました。
あんなに張り切っていたのに、お願いすることになったのは、いつもの朝食の準備だけ。
申し訳ない気持ちもありましたが、私の言葉を信じて朝早くから準備してくれた夫の姿が、なんだか愛おしく感じられました。
それからしばらく、夕飯の相談をするたびに、夫はあの朝の話を持ち出しました。
私が「今日はご飯にしようか」と言うと、夫は決まって真顔で聞いてくるのです。
「……それは、お米から?」
そのたびに2人で笑ってしまう、今でも忘れられない朝の出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














