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2026.09.16(Wed)

「痛かったね。立てそう?」転んだ子に手を差し出した私。気づかなかった親が、帰り道で変えたこと

「痛かったね。立てそう?」転んだ子に手を差し出した私。気づかなかった親が、帰り道で変えたこと

誰も、うしろを見ていなかった

その日は風のない昼下がりで、私は公園のベンチに座って時間をつぶしていた。

二十代の休日らしいことは何もしていない。缶コーヒーが温くなるまで、ただ人の出入りを眺めていた。

そこへ、大人二人と子ども二人の四人組が入ってきた。

少し気になったのは、歩くのがいちばん遅い下の子が、ひとりだけ後ろになっていたことだった。

大人二人は並んで歩きながら、手元の画面をのぞき込んでいる。

何かを見せ合っているらしく、時々笑い声も聞こえた。

下の子との距離は、少しずつ開いていった。

「ほら、ちゃんとついてきて」

大人の一人が、前を向いたまま声をかけた。

その直後だった。

下の子が小さな段差につまずき、両手をついて転んだ。そのまま地面に座り込み、砂のついた手を見つめている。

けれど前を歩く二人は、転んだことに気づいていないようだった。

「おいで。遅れちゃうよ」

もう一人の大人からも声が飛んだが、足は止まらなかった。

子どもは返事をしない。

そのとき、少し前を歩いていた上の子が振り返った。

「あ、転んでるよ」

その声に大人二人が振り向いた。

私もほとんど同時にベンチから立ち上がり、子どものほうへ歩いた。

3歩が、握った手で消えた

先に子どものそばまで着いた私は、少し離れたところでしゃがんだ。

「大丈夫?痛かったね」

子どもは黙ったまま、手のひらを見ていた。

急に知らない大人に声をかけられて驚いたのかもしれない。私は少し間を置いて、もう一度声をかけた。

「痛かったね。立てそう?」

すると、子どもが小さくうなずいた。

「…ころんだ」

「うん、見てたよ。びっくりしたね。手、貸そうか?」

差し出した指を、子どもがぎゅっと握った。

立ち上がったところで、砂利を踏む足音が近づいてきた。

「大丈夫?どこ痛い?」

先ほどの大人の一人が駆け戻り、子どもの前にしゃがんだ。

「ひざ…」

「ひざか。ちょっと見せて」

ひざには軽い擦り傷があり、砂がついていた。

大人は傷を確認すると、子どもの顔をのぞき込んだ。

「痛かったね。ごめんね、気づかなかった」

さっきまで手に持っていた画面は、もうポケットに入っていた。

それから私のほうを向き、少し慌てた様子で頭を下げた。

「すみません。声かけてもらって、ありがとうございました」

「いえ。立てたので、よかったです」

子どもはまだ少し不安そうな顔をしていたが、大人が手を差し出すと、今度はすぐに握った。

「ゆっくり行こうか」

「うん」

そこからは、その子の手を握ったまま、ゆっくり歩き始めた。もう一人の大人と上の子も、少し先へ行くことなく、その近くを歩いていた。

さっきまで空いていた数歩ぶんの距離は、握られた手のところでなくなっていた。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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