「頼んだものと違うみたいです」違う弁当を完食した客。追加の要求に店長が返した一言
先に帰った客の袋の中身
中華料理のチェーン店で、パートをしていたころのことです。
昼どきは持ち帰りの注文が重なり、私は受け渡しカウンターの内側で、次々とお弁当を袋に詰めていました。
その日、袋を受け取ったお客様が、中をのぞいて首をかしげました。
「すみません。これ、頼んだものと違うみたいです」
慌てて受け渡した順番と注文内容を確認すると、直前の2件を取り違えていたことが分かりました。
先に店を出た女性客には、880円の天津飯ではなく、1200円の酢豚のお弁当を渡してしまっていたのです。
目の前のお客様にはすぐに作り直しましたが、女性客は7分ほど前に店を出たあとでした。
それから30分ほどして、その女性客が戻ってきました。
40代くらいで、手にはレシートと、空になった容器の入った袋を持っています。
「ちょっと、入ってたの違うお弁当だったんだけど」
「大変申し訳ございません。こちらの確認不足です」
私が頭を下げると、女性は空の容器をカウンターに置きました。
「お金は返して、それから天津飯も作ってくれる?」
思わず返事に詰まりました。取り違えたのはこちらですが、女性が食べたのは、支払った金額より高い1200円のお弁当です。
私が店長を呼ぼうと厨房を振り返ると、女性は少し声を強めました。
「中身が違ったんだから、880円返すのが当然でしょ」
後ろには会計を待つお客様もいます。私はもう一度謝り、店長を呼びました。
空の容器を確認した店長
厨房から出てきた店長は私の隣に立つと、まず女性に深く頭を下げました。
「このたびは、こちらの取り違えで申し訳ございませんでした」
「だったら、早く返金して作ってよ」
店長は空の容器を確認してから、落ち着いた声で答えました。
「こちらは1200円の酢豚のお弁当ですね。お客様がお支払いになったのは、天津飯の880円です」
女性は黙って店長を見ました。
「間違えてお渡ししたのはこちらですので、880円は返金いたします。ただ、酢豚はすでに召し上がっていますので、さらに天津飯をお渡しすることはご容赦いただけますでしょうか」
女性はしばらく黙ったあと、小さく言いました。
「…じゃあ、返金だけでいいです」
店長が880円を渡すと、女性はそれを受け取り、そのまま店を出ていきました。
店長は容器を片づけながら、私にだけ聞こえる声で言いました。
「取り違えは、次から気をつけよう。でも、最初にちゃんと謝れていたのはよかったよ」
私はうなずきました。それ以来、忙しい時間ほど、渡す直前に注文内容をもう一度確認するようになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














