「来たばっかの君に何ができる(笑)」よそ者扱いした住民。だが、僕の行動で祭りが成功したワケ
田舎の歓迎は本物じゃなかった
末っ子の学校の都合で、家族そろって田舎町へ移り住んだ。近所への挨拶回りでは、みんな優しく笑ってくれた。
「困ったことがあったら何でも言ってね」
だから自治会の祭り準備の知らせが届いたとき、私は末っ子を連れて張り切って集会所へ向かった。
ところが、玄関を入っても誰も顔を上げない。私が「よろしくお願いします」と頭を下げても、返事はほくそ笑みだけだった。
「僕もやりたい」と末っ子が言うので、私は「一緒に手伝わせてください」と申し出た。
すると、中心にいた男が鼻で笑った。
「来たばっかの君に何ができる(笑)」
末っ子の顔がこわばった。私は「出直します」とだけ言って、その手を引いて帰った。
それきり、祭りの準備には呼ばれなくなった。たまに「是非ご参加ください」と回覧が回ってくるが、あの笑い声を思い出すと足が向かなかった。
太鼓だけは、ずっと叩いてきた
悔しさはあった。眠れない夜もあった。けれど、この町で子どもを育てると決めた以上、余所者と笑われたまま引き下がるつもりはなかった。
私には一つだけ自信があった。
子どもの頃から続けてきた和太鼓だ。祭り囃子の練習が公民館から聞こえてくると、私は末っ子と外で耳を澄ませ、リズムを覚えた。
夜、家の裏で古タイヤを相手に、こっそりバチを振るう日が続いた。
「お父さん、上手だね」
末っ子のその一言だけを支えに、私は本番の日を待った。
ある晩、太鼓の音を聞きつけて、自治会長が裏庭をのぞきに来た。
「ずいぶん様になっとるな。どこで覚えた」
「子どもの頃、地元の祭りでずっと」
私が答えると、会長は「その腕、いつか町のために貸してくれ」と笑って帰っていった。
囃子が止まった祭り本番
祭り当日、山車の先頭で太鼓を打つはずの叩き手が、高熱で倒れたと連絡が入った。代わりを務められる者がいない。
囃子のない祭りは、ただ神輿が黙って進むだけになる。住民たちがおろおろするなか、私は末っ子に背中を押されて名乗り出た。
「よかったら、私が叩きます」
例の男が、また鼻で笑った。
だが私がバチを構え、腹に響く一打を打ち込むと、その笑いは止まった。囃子に合わせて太鼓が鳴り、行列が動き出す。沿道から手拍子が起こった。
叩き終えた私に、自治会長が皆の前で頭を下げた。
「今年の祭りは彼のおかげだ」
男は何か言いかけて口をつぐみ、気まずそうに目を伏せ、そのまま列の後ろへ下がっていった。末っ子が「かっこよかった」と、私の手を強く握った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














