「これも生活音でしょ?」深夜まで走り回る上の階の住人。だが、私が見せた記録で管理会社が動いた
防音の建物で眠れない
私が引っ越したのは、建ったばかりの鉄筋コンクリート造のアパートだった。防音性が売りで、内見のときも外の音がまるで聞こえず、その静けさに惹かれて契約を決めた。
実際、暮らし始めてしばらくは、拍子抜けするほど静かだった。ところが、その静寂は長くは続かなかった。
ある晩を境に、真上の部屋から重たい足音が降ってくるようになったのだ。トン、トンではない。ドスン、ドスンと、床を踏み抜くような音だった。
子どもかな、と最初は思った。
けれど音の重さも歩幅も、どう聞いても大人のものだった。しかも夜十時を過ぎ、日によっては深夜一時まで、二時間以上も走り回る音が続く。
眠れない夜が何週間も続き、私は日中もぼんやりするようになった。防音を信じて選んだ部屋で、まさかこんな思いをするとは思わなかった。
枕に頭をつけるたび、天井の向こうで足音が始まらないかと身構えてしまう。休みの日でさえ、体の芯から疲れが抜けなくなっていた。
記録が管理会社を動かした
感情的に怒鳴り込んでも、こじれるだけだ。私は冷静に証拠を集めることにした。
足音がした日付と時刻、続いた長さを一件ずつ書き留め、スマートフォンにも録音を残していく。
二時間半に及んだ夜もあれば、日付をまたいで続いた夜もあった。三週間分の記録がたまったところで、私はそれを持って管理会社を訪ねた。
担当者は録音に耳を傾け、表情を引き締めた。そしてすぐに上階の住人を呼び、三者で話す場をつくってくれた。
ところが上階の住人は、悪びれる様子もなくこう言った。
「これも生活音でしょ?」
私は録音を再生し、日時を書いたメモを差し出した。
「毎晩2時間、記録しました」
スピーカーから流れる深夜の足音と、几帳面に並んだ日時。
住人は「そんなに……」とつぶやいたきり、言葉に詰まった。反論しようと口を開きかけ、結局は下を向いて黙り込んだ。
担当者がすかさず言った。「これは立派な迷惑行為です。改善をお願いします」。その一言で、住人は青ざめたまま、何度も小さくうなずいた。
あとで知ったことだが、隣の部屋の住人も同じ足音に悩まされていたという。
「ずっと言い出せなかったんです」と打ち明けられ、一人で抱えていたのは自分だけではなかったのだと分かった。
翌日から、あれほど続いた深夜の足音は、嘘のように消えた。廊下で会っても、住人のほうから目をそらして小さく会釈するようになった。防音の部屋に、ようやく本来の静けさが戻ってきた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














