「足りなくなったら困らない?」夫の忠告を聞かなかった私が、のっけ丼のチケットを数えて固まった理由
30分並んで、私が選んだ枚数
昔、夫と旅行に出かけたときのことです。
いちばん楽しみにしていたのは、市場で食べるのっけ丼でした。
入口でチケットを買い、市場の店を回りながら、好きな具と交換して丼にのせていく仕組みです。
朝から入口には長い列ができていて、私たちも30分ほど並びました。
ようやく順番が近づいたところで、夫が言いました。
「1人10枚ずつ買っておこうか」
私はすぐに首を振りました。
「そんなにいる?具なんて4つか5つのせたら十分でしょ」
「でも、足りなくなったら困らない?」
「2人で10枚あれば大丈夫だよ。余ったらもったいないし」
当時の私は、チケット1枚で具を1つ選ぶような感覚で考えていました。
朝ごはんですし、20枚も使うとは思えなかったのです。
結局、私の判断で2人合わせて10枚だけ購入しました。
夫は少し気になった様子でしたが、それ以上は何も言いませんでした。
残り4枚で、選べる具を考えることに
市場に入ると、まずご飯を受け取りました。
店の人にチケットを渡し、1人1枚ずつ。これで残りは8枚、1人4枚です。
「まだ4枚あるし、十分じゃない?」
そう言った私でしたが、刺身の店を見て回るうちに考えが変わりました。
具によって必要なチケットの枚数が違ったのです。1枚で交換できるものもありますが、食べたかった具の中には2枚、3枚必要なものもありました。
「あれ、思ってたより使うね…」
私が手元のチケットを数えていると、夫がこちらを見ました。
「だから1人10枚って言ったのに」
責めるというより、やっぱりね、と言いたそうな顔です。
「…もう1回並んで買い足す?」
入口を見ると、まだ長い列が続いていました。
夫は苦笑いしながら首を振りました。
「また30分並ぶのは、さすがにきついな」
仕方なく、私たちは残ったチケットで収まるように考えながら、えびやほたてなどを選びました。
隣の丼を見て、ようやく分かった
夫と並んで席に着いたとき、隣のお客さんの丼が目に入りました。
まぐろの赤、いくらのだいだい色、うにの黄色。いろいろな具がのっていて、ご飯がほとんど見えません。
それに比べると、私たちの丼は白いご飯の部分がずいぶん目立っていました。
夫も同じほうを見ています。
「……あれくらい、のせたかったね」
「うん……」
その瞬間、夫が最初に「1人10枚」と言った意味が、ようやく身にしみました。
あれから10年。今でも旅行の話になると、夫はときどき笑いながら私に言います。
「チケットは、1人10枚な」
その言葉を聞くたびに、色とりどりだった隣の丼と、白い部分の多かった自分たちの丼を思い出します。
今なら私は、迷わずうなずきます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














