「今年もお盆玉くれよ」名前も知らない遠い親戚のお願い。私が返した一言で空気が凍りついた瞬間
毎年のたかりに笑顔で耐えて
お盆に帰省すると、広間で必ず捕まる相手がいました。年に一度しか会わない、遠い親戚の男性です。
「元気にやってるのか?ところで今年もお盆玉くれよ」
挨拶とたかりが、ひと続きでやってくる。私はこの人の名前も、どういう続柄なのかも、正直よく分かっていませんでした。
それでも毎年、いい大人にお盆玉をねだられるのです。
「もう、逆にこっちがいただきたいくらいですよ」
愛想笑いでそう返すのが、私の決まり文句でした。波風を立てたくない一心で、毎年同じやり取りを繰り返してきたのです。
けれど内心では、名前も知らない人にたかられる理不尽さに、ずっとモヤモヤしていました。
数えてみせた夏
その年、彼はいつも以上に上機嫌で寄ってきました。
「お前は気前がいいからな。今年もよろしく頼むよ」
私は箸を置き、穏やかに、けれどはっきりと口を開きました。
「ところで、お名前なんでしたっけ。私、毎年お会いしてるのに存じ上げなくて」
彼が言葉に詰まった隙に、私は続けました。
「名前も知らない相手にお小遣いをねだるって、なかなかの度胸ですよね。いい大人なんですから、ここは年長者のあなたから、いかがですか」
笑顔のまま手のひらを差し出すと、広間がしんと静まりました。一拍おいて、伯父が「違いない!」と膝を打ち、あちこちから笑いがこぼれます。
彼は顔を強張らせ、「いや、冗談のつもりで……」と口ごもりました。
差し出した私の手を見て、彼はそろそろと後ずさり、人混みの奥へ消えていったのです。
名前を呼ばれなくなった私
それからのお盆、彼は私を遠目に見つけると、すっと進路を変えるようになりました。
「……どうも」
会釈だけ寄こして、足早に去っていく。あんなに馴れ馴れしかったのが嘘のようでした。
伯母が肩を叩いて言いました。「あなた、よく言ったわね。みんな内心思ってたのよ」。その言葉に、長年の重さがふっと軽くなった気がしました。
笑顔で受け流すのも優しさですが、線を引くこともまた、自分を守る優しさなのだと知った夏でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














