「一口しか食べてないのよ、交換して」落としたアイスを持って戻ってきた親。だが、店長が毅然と対応した結果
店を出た直後に落ちたアイス
日曜日の商店街は、多くの買い物客でにぎわっていました。
私が並んでいたのは、昔からある小さなアイスクリーム店です。
少し前に会計を終えた親子が、店の前でアイスを受け取っていました。
小さな男の子が手にしていたのは、緑色のアイスをのせたコーンです。
「落とさないようにね」
親御さんに声をかけられ、男の子はうれしそうにうなずきました。
ところが、店を出て少し歩いたところで男の子が足を取られます。
手にしていたコーンが傾き、アイスがそのまま地面へ落ちてしまいました。
男の子は立ち止まり、地面に落ちたアイスを見つめています。
私は「かわいそうに」と思いながら、その様子を見ていました。
「一口しか食べてないのよ」
すると数分後、その親子が再び店へ戻ってきました。
親御さんはレジへ近づくと、店員さんに声をかけます。
「これ、交換してもらえます?」
店員さんは少し驚いた様子で、親子の手元を確認しました。
「何か商品に問題がございましたか?」
「そうじゃなくて、外で子どもが落としたの。一口しか食べてないのよ」
そう言って、新しいアイスを求めたのです。
店員さんは申し訳なさそうに頭を下げました。
「恐れ入りますが、お渡ししたあとの商品を落とされた場合、交換はいたしかねます」
すると親御さんは、納得できない様子で声を強めました。
「でも、ほとんど食べてないんですよ?」
「申し訳ございません」
「子どもが落としたんだから、それくらいサービスしてくれてもいいでしょう」
列に並んでいた人たちも、次第にそのやり取りへ目を向け始めました。
男の子は親御さんの後ろで、何も言わずにうつむいていました。
店長が静かに伝えたこと
そこへ、店の奥から店長さんが出てきました。
「お待たせして申し訳ございません」
店長さんはまず親御さんの話を聞き、それから落ち着いた声で説明しました。
「お子さまにお怪我がなかったのは何よりです。ただ、商品をお渡ししたあとに落とされた場合は、新しい商品との交換は行っておりません」
親御さんはすぐに言い返します。
「でも、一口しか食べてないんですよ」
店長さんは表情を変えませんでした。
「食べた量にかかわらず、同じ対応をさせていただいております」
「小さい子が落としたのに?」
「はい。申し訳ございませんが、ほかのお客様にも同じようにご案内しております」
その言葉を聞いて、親御さんはしばらく黙っていました。
特別扱いはできないと、店長さんがはっきり伝えたからでしょう。
やがて親御さんは、小さく息を吐きました。
「……じゃあ、もういいです」
そう言って男の子の手を取り、そのまま店を出ていきました。
店長さんは店員さんに「大丈夫ですよ」と声をかけると、列に向かって頭を下げました。
「お待たせして申し訳ございません。次のお客様、どうぞ」
店員さんも気持ちを切り替えたように、次の注文を受け始めます。
子どもがアイスを落としてしまったこと自体は気の毒でした。
ただ、それと店側に交換を求めることは別の話です。
誰に対しても同じルールで対応する店長さんの姿を見て、私は静かに納得したのでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














