「直接言って揉めるのも嫌なんです」隣の家の分まで雪かきしていた僕。だが、町内会長が提案した方法とは
隣の家の前だけ残る雪
冬の朝、雪かきでいちばん困るのは、かいた雪の置き場所だ。
僕の家のまわりはここ数年で家が建ち並び、道の脇に寄せるすき間もほとんどない。
仕方なく、ひとすくいずつ道を渡り、向かいの歩道の端まで雪を運んでいた。
ところが隣の家の前には、いつも雪が膝ほどの高さまで残っていた。
住んでいるのは50代くらいの男性で、朝になっても車が通った二本の跡がついているだけだった。
その冬、大雪が2度あった。どちらの朝も隣の家の前まで雪が残り、車が通りにくくなっていたため、僕は自分の家の前に続けて、そこまで雪をかいた。
2度目の朝、男性が玄関から顔を出した。
「いつも、ありがとうございます」
「いえ。ここが残ると、車が通りにくくなるので」
男性は短く頭を下げ、そのまま家へ戻っていった。
僕はスコップを握ったまま、向かい側に積み上がった雪を見た。次の大雪でも二軒分をかくことになるのかと思うと、さすがに気が重かった。
「隣の分まで2回かいてるんです」
その週、僕は70代くらいの町内会長さんを訪ねた。会長さんは玄関先で、僕の話を黙って聞いてくれた。
「うちも雪の置き場がないのに、隣の分までかいてるんです」
「次も同じだと思うと、正直ちょっときつくて…」
会長さんは少し考えてからうなずいた。
「それは、一軒だけに任せる話じゃないな」
「でも、直接言って揉めるのも嫌なんです」
「だったら、誰かを名指しせずに、町内みんなに同じ形で回そう」
三日後、回覧板で除雪当番表が回ってきた。町内の家が道に沿って並び、週ごとの担当が一枚にまとめられている。どの家にも同じように当番が回る形で、特定の家を責めるような書き方はなかった。
その日の夕方、郵便受けを見に出ると、会長さんがその紙を持って隣の家を訪ねていた。
「今年から、雪かきは順番でお願いします。お宅は来週の月曜です。救急車が通れるくらいの幅は、みんなで空けておきたいので」
男性は紙に目を落とし、しばらくしてうなずいた。
「…わかりました。月曜ですね」
月曜の朝に響いたスコップの音
月曜の朝。まだ薄暗いうちから、外でスコップの音が聞こえた。
カーテンを開けると、男性が自分の家の前をかき終え、そのまま当番の区画の雪を歩道の端へ運んでいた。通りかかった近所の人に声をかけられると、男性は軽く頭を下げて、また雪かきを続けた。
その朝、僕がかいたのは自分の家の前だけだった。
家に戻って温かいコーヒーを飲みながら窓の外を見ると、道には十分な通り道ができていた。誰か一軒が黙って抱えるのではなく、みんなで少しずつ負担する形になったことに、僕はほっとした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














