「そこ、別の番号の場所じゃない?」運動会の最前列を占めたママ友たち。だが、係の先生が伝えた正論
最前列に広げられた花柄のシート
その年の運動会も、保護者の観覧席はくじ引きで決まっていました。トラックに沿って番号の札が立てられ、番号ごとに一家族ぶんの場所が区切られています。
三十代の私は、自分の番号の場所に小さなシートを敷き、娘の水筒を膝に置いて競技が始まるのを待っていました。
すると午前の競技が始まる少し前、顔見知りのママ友が花柄の大きなシートを持って最前列へやってきました。
そこには別の番号札が立っていましたが、ママ友はその前にシートを広げ始めます。さらに、普段から一緒にいるママたちも集まり、あっという間に5〜6人ほどになりました。
思わず私は声をかけました。
「そこ、別の番号の場所じゃない?」
するとママ友は、悪びれる様子もなく答えました。
「うん。でも、くじで決まった席より前で見たいんだよね」
「でも、そこを取った人が来るんじゃ……」
「前で見たいんだよね。せっかくだし、みんなで見たいし。注意されてからでいいかなって感じ」
そう話しているうちに、その番号のご家族がやってきました。
しかし、大きなシートにはすでにママたちが並んでいます。
おばあちゃんの手を引いていたその家族のお母さんは少し困った顔をしたあと、「仕方ないですね」と小さく笑い、その場を離れて後ろへ下がりました。
私は何か言うべきだと思いながらも、その場では声を出せませんでした。
座席表を確認した先生の一言
しばらくすると、バインダーを抱えた係の先生が観覧席を回ってきました。
先生は最前列の大きなシートに気づくと足を止め、バインダーの座席表と目の前の番号札を確認しました。
「すみません。観覧席は、くじで決まった番号の場所でお願いしています」
ママ友は少し戸惑った様子で答えました。
「せっかくだから、みんなで一緒に見たいなと思って…」
先生は責めるような口調にはならず、もう一度番号札を指しました。
「お気持ちは分かりますが、こちらは別のご家族のお席です。それぞれ決まった番号の場所でお願いします」
そして、後ろへ下がっていたご家族に気づくと、「こちらで大丈夫ですよ」と声をかけました。
「え、いいんですか」
「はい。番号どおりのお席ですから」
ママ友は座席表と番号札を見比べ、それ以上は何も言いませんでした。花柄のシートを端からたたみ、ほかのママたちとその場を離れていきました。
ご家族は先生に頭を下げ、あらためて最前列にシートを敷きました。おばあちゃんも腰を下ろし、トラックのほうをじっと見ています。
ほどなくして、かけっこのピストルが鳴りました。観覧席から一斉に声援が上がり、私もようやく娘の姿を探して前を向きました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














