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2026.09.25(Fri)

「話しかけられるのが嫌なのかな」2年間あいさつを返さなかった下の階の青年。エレベーターを避けていた私が、翌日乗り込めた理由

「話しかけられるのが嫌なのかな」2年間あいさつを返さなかった下の階の青年。エレベーターを避けていた私が、翌日乗り込めた理由

あいさつするのが、こわくなった

ひとり暮らしの私にとって、マンションのエレベーターで交わすあいさつは、ちょっとした日常の会話だった。

ただ一人、下の階に住む20代くらいの青年だけは違った。いつも視線を落としていて、私が「おはようございます」「こんにちは」と声をかけても、顔を上げることはなかった。

最初は聞こえなかったのだろうと思っていた。けれど一年がたち、2年がたっても、一度も返事はない。

そのうち私は、「もしかして、話しかけられるのが嫌なのかな」と考えるようになった。

青年が先に乗っているのを見ると、エレベーターを1本見送ることさえあった。

ある朝、ホールで同じ階の奥さんと話していると、ふいに聞かれた。

「最近、1本あとのに乗ってることあるよね。どうしたの?」

私は少し迷ってから答えた。

「下の階の若い人、いるでしょう。私、2年くらいあいさつしてるんだけど、一度も返ってきたことがなくて」

「ああ、いつもうつむいてる子?」

「そう。嫌がられてるのかなって思ったら、なんとなく一緒に乗りづらくなっちゃって」

口にしてみると、自分でも気にしすぎなのかもしれないと思った。

それでも、そのころの私は青年と顔を合わせるたびに身構えていた。

初めて聞いた声

年の瀬の夕方、両手に買い物袋を提げてエレベーターに乗ろうとすると、先にあの青年がいた。

引き返す間もなく扉が閉まり、私は黙って袋を抱え直した。

その瞬間、買い物袋の底が破れた。

品が床にばらばらと転がり、青年の靴元まで広がった。

「あっ、ごめんなさい」

私が慌ててしゃがもうとすると、青年のほうが先に腰を落とした。転がった品を一つずつ拾い、破れた袋の底を支えてくれた。

「これ、このままだと持てないですよね。僕が持ちます」

初めて聞いた青年の声に、私は一瞬返事が遅れた。

「え…あ、ありがとう。でも悪いわ」

すると青年は耳に手をやり、イヤホンを両方とも外した。

私は思わず青年の顔を見た。

避けられていると思い込んでいたけれど、少なくとも私が考えていたような理由ではなかったらしい。

「拾ってくれてありがとう」

青年は少しだけ笑って、「いえ」と頭を下げた。

翌日の昼、エレベーターの扉が開くと、また青年が乗っていた。

一瞬だけ足が止まった私を見て、青年はイヤホンを外した。そして今度は向こうから、小さく頭を下げた。

「こんにちは」

私は思わず笑って、「こんにちは」と返した。

もう、1本あとのエレベーターを待つ必要はなかった。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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