「俺の視点で整理し直した方がいい。確認させてくれ」プレゼン前に資料を奪った先輩。だが、部長に全てを明かした結果
会議で意見を言い直される日々
設計チームに配属されてから二年、先輩主任の言動に違和感を持ちはじめたのは、入社三年目の秋ごろだった。
月例の設計会議で改善案を出すと、その場で「現実的じゃない」と一言で切られる。
ところがしばらく後、まったく同じ方向性が先輩主任の口から出てくる。
部長はメモを取りながら「それはいい視点だ」と反応する。
この繰り返しが、三回、四回と続いた。指摘されているのは自分の担当箇所だけで、他の若手には同じことが起きていない。確信に変わるまでに、そう時間はかからなかった。
口に出すことはしなかった。証拠と呼べるものが手元になく、言葉にしても「そんなつもりじゃない」で終わる気がしていた。
ただ会議のたびに少しずつ、発言することへの抵抗感が積み上がっていった。
それでも手を抜く気にはなれなかった。資料だけはいつも丁寧に作った。評価は正しく積み上がると信じていたし、途中でやめたら先輩主任の思うとおりになるという意地もあった。そんな状況が一年近く続いた。
発表前に書き換えられた資料
部長直命の製品改善提案を二ヶ月かけてまとめ、発表当日の朝を迎えた。
そこへ先輩主任がやってきた。
「俺の視点で整理し直した方がいい。確認させてくれ」
画面を見ると、改善方針の核心部分が書き変わっていた。
二ヶ月かけた試算が削られ、提案者欄には先輩主任の名前が入っていた。
「この方向性は俺が出した案だ」
先輩主任がそう言った。落ち着いた声だったが、こちらを試すような目をしていた。
ここで黙れば、また同じことが繰り返されると思った。
資料を閉じて、部長室へ向かった。
これまでの会議でのやり取りを、時系列で、数字の裏付けとともに話した。部長は最後まで黙って聞いてから、席を立った。
廊下ですれ違った瞬間
プレゼンは自分がそのまま担当した。先輩主任は同席したが発言しなかった。
提案は正式に承認され、報告書の提案者欄には自分の名前が入った。
部長室から先輩主任が出てきた直後の表情は、自分は見ていなかった。
ただ翌日の昼、廊下で向き合う場面があった。相手は一瞬止まり、視線を床に落としてから、何も言わず通り過ぎた。
あの廊下でのわずかな間が、答えの代わりだったように思う。部長室で何が話されたかは知らない。
ただそれ以来、先輩主任がこちらの担当箇所に口を出すことはなくなった。次の会議では、自分の発言に対して先輩主任が何も言わなかった。それが一番、腑に落ちた瞬間だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














