雨のたびに泥と落ち葉で詰まる家の前の側溝…言い出せずにいた私が、坂の上の奥さんに伝えた事実
大雨の日、2度詰まった側溝
その日は朝から雨が強く降っていました。昼前に玄関を出ると、家の前の道には茶色い水が流れ、側溝のふたの格子には枯れ葉と泥がびっしり張りついていました。
うちは坂の途中に建っていて、道の上手には庭の広い家があります。
雨が降ると、その家の庭から流れ出た土や落ち葉が坂を下り、うちの前の側溝にたまってしまうのです。
私は長靴をはき、ふたを外して泥をかき出しました。
ところが夕方にもう一度見に行くと、また同じように詰まっています。その日は結局、1日に2度も同じ作業をすることになりました。
夜、実家の母から電話があり、私はつい愚痴をこぼしました。
「雨が降るたびに、うちの前の側溝が詰まるの」
「それなら、上のお宅に一度話してみたら?」
「でも、ご近所だし…言い方を間違えて気まずくなるのも嫌なんだよね」
母も「それもそうね」と言い、それ以上は何も言いませんでした。
上の家の人が、わざわざうちの前の側溝まで見に来ることはありません。
もしかしたら、こんな状態になっていること自体を知らないのかもしれない。そう思うと、何も言わずに腹を立てているのも違う気がしました。
思い切って伝えた朝
数日後の雨上がりの朝、私はまた側溝の前にしゃがんでいました。
格子の下から枯れ葉をつまみ出していると、坂の上から、上の家の奥さんが犬を連れて歩いてきました。60代くらいで、白い帽子をかぶっています。
「おはようございます。お掃除ですか?」
声をかけられ、私は軍手を外して立ち上がりました。前の晩から、もし会えたら話そうと何度も考えていたことを口にしました。
「実は、雨が降ると、お宅の庭の土や葉っぱがここまで流れてくるみたいで…。多い日は2回掃除することもあって、ちょっと困っていたんです」
言い終えると、心臓がどきどきしました。
奥さんはすぐには返事をせず、犬のリードを短く持ち直して側溝の前にかがみました。底にたまった黒い泥と、私の足元のバケツをしばらく見ています。
「…こんなに流れてたのね。上にいると、ここまで分からなくて。気づかなくて、ごめんなさい」
そう言って、奥さんは帽子を取って頭を下げました。
「いえ、こちらこそ急にすみません」
「ううん。言ってもらわなかったら、ずっと気づかなかったと思う」
責められたり言い返されたりするかもしれないと身構えていた私は、その言葉にほっとしました。
次の週末、奥さんの家から、とんとんと木づちの音が聞こえてきました。見ると、庭の端には土止めの板が入り、生け垣の下には落ち葉を受ける網が張られていました。
その後、台風が近づいた夜にも強い雨が降りました。それでも翌朝、側溝には詰まりもなく、ふたの下を水が流れているだけでした。
最近では、奥さんが犬の散歩で坂を下りてきたとき、ときどき側溝をのぞいて声をかけてくれます。
「今日は大丈夫?」
「はい。ずっと大丈夫です」
奥さんは安心したように笑うと、犬と一緒にゆっくり坂をのぼっていきました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














