「いいか、人はまず見た目で判断するんだ」オンライン面談で見せ方を語っていた先輩。画面が傾いた瞬間、私が見てしまった姿
画面の向こうに現れた、隙のない先輩
昼、自宅の小さな仕事部屋で、私はノートパソコンに向かっていました。
この日は会社の先輩とのオンライン面談。来年から部署の体制が変わるため、今後どんな仕事をしていきたいか、希望を聞いてもらうことになっていたのです。
先輩は私より少し年上で、普段から人への見せ方を大切にする人でした。
「いい仕事をしても、相手に伝わらなきゃもったいないぞ」
会議でも、そんなことをよく口にしていました。
面談が始まると、画面に映った先輩はアイロンのきいたシャツ姿。背後には洋書がきれいに並んだ本棚があり、顔には照明まで当たっています。
一方、私の背景は何の飾りもない白い壁です。
「どうだ、この本棚。わざわざ並べ替えたんだ」
「すごいですね。私は壁を映すので精いっぱいですよ」
「こういうのも大事なんだよ。印象が変わるだろ?」
先輩は得意そうに笑いました。
ここまで身だしなみに気を配る人なら、きっと机の下もきちんとしたスラックスなのだろう。私はそう思いながら、少しだけ背筋を伸ばしました。
カメラが下を向いた瞬間、見えてしまったもの
面談が進み、話題は私の今後の役割になりました。
私は、できれば表に立つより、裏方として仕事を支えていきたいと伝えました。
すると、先輩がぐっと身を乗り出します。
「えっ、もう裏方に回るつもりなのか?」
「いや、私、あまり前に出るのが得意じゃなくて…」
「そんなの、やってみなきゃ分からないだろ。まだ早いって!」
先輩は両手を大きく動かしながら、熱心に話し始めました。
そのときです。
勢いよく動かした先輩の手が、ノートパソコンの画面上部に当たりました。
ガタン、と画面が揺れ、そのまま前へ倒れてしまったのです。
当然、カメラも下を向きました。
先輩は低い机にパソコンを置いていたらしく、画面には、あぐらをかいた脚が大きく映し出されました。
そこに見えたのは、派手な柄のゆったりしたハーフパンツ。しかも、太ももには冷却シートまで貼られています。
さっきまでのパリッとしたシャツと立派な本棚からは、まったく想像できない姿でした。
ところが先輩は、カメラが下を向いたことに気づいていません。
「いいか、人はまず見た目で判断するんだ」
よりによって、その言葉です。
私は思わず口を押さえました。笑ってはいけないと思うほど、肩が震えてしまいます。
「せ、先輩…」
「ん? どうした?」
「先輩、カメラが下を向いてます」
「え? ……うわっ!」
画面の中の脚がぴたりと止まり、次の瞬間、映像が大きく揺れました。
ようやくシャツと本棚が戻ってくると、先輩は気まずそうに咳払いをしました。
「……いや、これもブランディングの一環だ」
「いやいや、さすがに無理がありますよ!」
とうとう私が吹き出すと、先輩もこらえきれずに笑い始めました。
しばらく二人で笑ったあと、先輩が目じりを拭いながら言いました。
「で、お前のほうは、下はどうなってるんだ?」
私はそっと机の下を見ました。
そこには、毛玉だらけの部屋着のズボン。
「……私も、人のことは言えません」
そう答えると、先輩はまた笑い出しました。
あれほど見せ方について語っていた先輩と、上半身だけ仕事着の私。
お互いに、画面に映らないところはずいぶん気を抜いていたようです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














