「もっと崩しちゃえ!」砂場で息子をあおった母親。だが、男の子が取った行動に笑顔が消えた
走ってきた男の子が崩した砂山
ある休日の昼、娘を連れて公園へ出かけたときのことです。
娘はブランコへ駆けていき、私は砂場のそばのベンチに腰を下ろしました。
砂場では、幼稚園くらいの男の子が一生懸命に砂山を作っていました。
砂を盛っては少し離れ、形を確かめてまた手を動かしています。
砂場の向こう側のベンチには、その子の母親が座り、楽しそうに見守っていました。
そのとき、別の男の子が砂場を横切るように走ってきました。
砂山に気づかなかったのでしょうか。男の子の足がぶつかり、せっかく積み上げた山が上から崩れてしまったのです。
「あ…」
砂山を作っていた子は、崩れた砂を見つめたまま動かなくなりました。
走ってきた子も、しまったというような顔で立ち止まっています。
子ども同士のことなので、私はひとまず様子を見ていました。
すると突然、砂場のふちに立っていた女性が笑い出したのです。
走ってきた男の子の母親でした。
「やだ、崩れちゃったじゃない」
向こうのベンチにいる母親が困ったような顔をしても、女性は笑ったままです。
「こういうのは笑っとけばいいのよ」
それだけではありません。自分の息子に向かって、さらに声をかけました。
「いいよいいよ、もっと崩しちゃえ!」
私は思わず女性の顔を見ました。
わざとではなかったとしても、砂山を作っていた子は悲しそうにしています。
それなのに、どうしてそんなことが言えるのでしょう。
母親の笑い声が消えた瞬間
ところが、走ってきた男の子は母親の言葉には反応しませんでした。
砂山を作っていた子の顔を、じっとのぞき込んでいます。
「ねえ、聞いてるの?」
母親が呼びかけても、男の子は振り向きません。
そして、砂の上に転がっていたスコップを拾い、うつむいている子の隣にしゃがみました。
「ごめんね、いっしょにつくろう」
そう言って、にっこり笑ったのです。
すると、うつむいていた子も顔を上げました。
「うん、つくる!」
二人は並んでしゃがみ、崩れた砂を集め始めました。
さっきまで悲しそうだった子も、今度は楽しそうにスコップを動かしています。やがて、先ほどより大きな砂山が少しずつできていきました。
周りのベンチにいた保護者たちも、穏やかな表情で二人を見守っています。
ふと、砂場のふちに立つ母親を見ると、さっきまでの笑顔が消えていました。
何か言いかけたように口を開きましたが、結局何も言わず、わが子の背中を見つめています。
そのとき、向こうのベンチから砂山を作っていた子の母親が声をかけました。
「ありがとう。やさしいのね」
男の子は少し照れたように笑い、またスコップを動かし始めました。
そこへ、ブランコから戻ってきた娘が私の隣に立ち、砂場を指さしました。
「あのお山、大きいね」
私は笑顔でうなずきました。
砂場のふちでは、あれほど笑っていた母親が、もう何も言わずに二人の様子を見つめていました。
母親の言葉ではなく、目の前の友だちの悲しそうな顔を見て、自分から謝った男の子。
その小さな行動が、私にはとても印象に残りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














