「はみ出した柿は、うちの物よ」町内の決まりだと、私の柿をもいでいく隣の奥さん。私の一言で顔が真っ赤に
柵越しの町内の決まり
隣の奥さんは、柿の落ち葉に文句を言いました
越して2年目の我が家の庭には、前の住人が植えた柿の木があります。隣の庭とは、腰の高さの白い柵で分かれています。
10月の土曜の朝、柿を取ろうと竹の手かごを持って庭へ出ると、柵の向こうで隣の奥さんが枝を指さしていました。枝の先が少しだけ、柵を越えて隣の庭の上に出ています。
「落ち葉が毎日、うちに入るのよ。」
隣の奥さんは、この辺りに30年住む50代の女性。「町内のことなら何でも知っている」が口癖です。
「町内の決まり、知らないの?」
はみ出した物ははみ出た先の家の物、と教えられました
決まり、ですか、と聞き返すと、奥さんは人さし指を立て、子どもに教えるような声で言いました。
「柵から1センチでもはみ出した物は?」
私が答えられずにいると、奥さんは自分で続けました。
「はみ出た先の家の物なの。」
隣の奥さんは、柵を越えた枝の柿を全部もいでいきました
奥さんは背伸びをして、柵を越えた枝の柿を一つ残らずもぎ、白いかごに入れていきます。
「はみ出した柿は、うちの物よ。」
その木はうちの、と言いかけると、奥さんは手を止めずに言いました。
「越してきた人は口を出さないで。」
嫌なら枝を切りなさい、とまで言われ、私は空の手かごを抱えたまま黙りました。そんな決まりが本当にあるのか疑問でしたが、古くから住む人と角を立てたくなかったのです。
柿をもいでいく隣の奥さん
2週間後、隣の奥さんが庭に入らせてと言いに来ました
2週間後の土曜の朝。奥さんが空の白いかごを抱えて、また柵の向こうに立ちました。今度は柿の木と反対側、道に近い方の端です。
「ちょっと庭に入らせてね。」
「うちのかぼちゃを取るから。」
返事をせずに、私は柵の端にある芝生へ向かいました。
隣の庭から伸びたかぼちゃのつるが、私の庭に入り込んでいました
柵の下をくぐった緑のつるが、うちの芝生の上に伸びています。その先には、大きなオレンジ色のかぼちゃが3つ実っていました。
夏から隣の庭のかぼちゃのつるが入り込んでいましたが、ご近所同士ではお互い様だと思い、そのままにしていました。秋になって実が大きく育っても、特に気にしていなかったのです。
私はかぼちゃの前に立ち、奥さんを見ました。
「柵から1センチでもはみ出した物は?」
2週間前、奥さんが私に出した問いです。答えは、奥さん自身が言いました。はみ出た先の家の物、です。奥さんの目が、かぼちゃの上で止まりました。
隣の奥さんは顔を真っ赤にして、空のかごを抱えて黙りました
「つるの根は、うちの庭にあるでしょ!」
「柿の根も、うちの庭にあります。」
奥さんの言う町内の決まりに従うなら、このかぼちゃもうちの物になるはずです。そんな決まりは作り話だったと認めていただければ、かぼちゃはそのまま持ち帰ってもらって構いません、と私は続けました。
柿が欲しくて、町内の決まりを知らない私になら通ると思ったのでしょう。柵の先の道では、落ち葉を掃いていた向かいの住人が手を止め、こちらを見ています。
「町内のことなら何でも知っている」が口癖の奥さんは、周囲の目も気になるのか、すぐには言い返せない様子でした。
奥さんは顔を真っ赤にして口を結び、空のかごを抱えたまま、黙って自分の家へ戻っていきました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














