 
「手抜き」と決めつけられたお正月
新しい年が明けましたが、我が家のお正月の朝は、少し曇り空から始まりました。
「あら、今年はおせちないの?若い人は楽するのがうまいわね〜おせち作らないなんて手抜きね」
夫と二人、新年の挨拶のために訪れた義実家。
私が持参した料理を見て、義母が私に聞こえるようにはっきりと言いました。
確かに、今年は年末の仕事が忙しすぎたのと、夫と「お正月くらい、好きなものを買ってのんびりしよう」と話し合った結果、おせちは用意しなかったのです。
代わりに、少し高級なオードブルやお寿司を持ってきていました。
「すみません、今年は忙しくて…。代わりにこちらを」
「ふぅん。まあ、うちには立派なおせちがあるから、別にいいけど」
義母はそう言うと、台所にある立派な三段重を指さしました。毎年、義母が自慢する手作りのおせちです。私は小さくなりながら、「いただきます」と席に着きました。
明かされた「手作り」の真実
お雑煮をいただき、少し落ち着いた頃です。義母がそそくさと裏の物置部屋に入っていくのが見えました。何だか慌てている様子です。
「母さん、どうかした?」
夫が尋ねると、義母は「なんでもないのよ!」と少し甲高い声で返事をしました。
(……なんだろう?)
少しして、義母が「あら、あれが無いわ」と台所で騒ぎ始めました。どうやら、デザートに出すはずの高級な羊羹が見当たらないとのこと。
「私、見てきます」
気を利かせたつもりで、先ほどの物置部屋をのぞき込みました。古い棚や段ボールが積まれています。
「羊羹、羊羹…」
探していると、棚の奥、布がかぶせられた場所に、見慣れたロゴの入った保冷箱が隠されているのに気づきました。それは、年末にデパートの食料品売り場でよく見かける、老舗料亭のものです。
(まさか…)
私は恐る恐る、その箱の蓋を少し開けてしまいました。 そこにあったのは——。
義母が先ほど「手作り」だと自慢していた三段重と、まったく同じ詰め合わせの、豪華なおせち料理でした。
「あなた、そこで何してるの!」
戻ってきた義母が私を見て固まり、そして真っ赤になりました。
どうやら、毎年「手作り」と言っていたおせちは、この料亭からお取り寄せしていたようです。私に「手抜き」と嫌味を言った手前、バレたくなかったのでしょう。
「あ、羊羹、ここにありました!」
私は慌てて、箱の横に置いてあった羊羹の包みを手に取り、満面の笑みで義母に渡しました。
箱のことは、夫にも言っていません。今年の私のお正月は、義母の秘密を共有してしまった、少しだけ気まずく、でも少しだけ面白い幕開けとなりました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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