本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
香水の匂いがするという先輩
私は広告代理店で働く二年目の社員です。
部署には、仕事は優秀ですが物言いが厳しい先輩がいました。
ある朝、私がデスクで作業を始めようとした時、先輩が音もなく近づいてきました。
先輩は私の横に立ち止まると、「香水きついわね、オフィスマナーとしてどうかしら」
香水は一切つけず、制汗剤も無香料のものを使っていたため、心底困惑し、固まりました。
「私、香水はつけていないのですが……」と答えましたが、先輩は納得しません。
「明らかに強い匂いがするわよ。あなたが原因じゃないかしら」と冷たい視線を浴びせて去って行きました。
その後も、「匂いが強くて頭が痛くなる」といった嫌味は日常的に繰り返され、身に覚えのない私は毎朝出勤するのが憂鬱でした。
自分の柔軟剤が原因かと疑い、すぐに無香料のものに切り替えて洗濯しました。
しかし、先輩の指摘は止まりません。
同僚に相談しても、「シャンプーの匂いしかしないよ」と首を傾げられるばかり。
匂いの正体
ある日の午前中、会議がありました。
先輩と私、そして他部署の部長を含めた五名が会議室に集まりました。
会議が始まって間もなく、部長が「あれ、なんか今日、すごく華やかな香りがしますね。どなたかの柔軟剤ですか?」と尋ねました。
すると、先輩はいつもの調子で「ええ、本当にきつい匂いですわね。オフィシャルな場には不適切です」と言いながら、私の方を一瞥しました。
その瞬間、部長が間を置いて「いや、あなたのコートからじゃないですか? 席についた時から香っていますよ」と、穏やかながらも明確に指摘したのです。
先輩は、その一言で表情を一瞬で失いました。
自分のコートの袖口を嗅ぎ、顔を真っ赤にしています。
そう、先輩が私に「きつい香水」だと指摘し続けた「強い匂い」の正体は、先輩自身の柔軟剤だったのです。
先輩は、顔を伏せながら「……失礼いたしました」とだけ小さな声で呟きました。
それ以来、先輩が匂いについて口にすることは一切なくなりました。
私も、自分が原因ではなかったことに安堵しましたが、人の振り見て我が振り直せ、と心に刻みました。
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