「これ、不良品だったの」定期的に返品を求める客。だが、店員が返品を断った理由とは
返品の回数が気になり始めた
アパレルショップで働いていた頃、夕方になると時々来店する女性客がいました。
四十代くらいで、いつもきれいに身なりを整えている方です。
購入した服を持ってきては、「家で着てみたら似合わなかった」と返品を希望します。
私が働いていた店では、タグが付いた未使用品で、購入から一定期間内などの条件を満たしていれば、自己都合でも返品を受け付けていました。
そのため、最初のうちは特に不思議には思っていませんでした。
ただ、ある日返品の記録を整理していると、同じ名字が短期間に何度も出てくることに気づきました。
しかも、対応したスタッフは毎回違います。
「この方、最近よく返品されていませんか」
チーフに確認すると、他のスタッフにも心当たりがありました。
返品そのものは規定内でしたが、念のため、それ以降は商品の状態をこれまで以上に丁寧に確認することになりました。
袖口にあった不自然な切れ目
しばらくして、その女性客がワンピースを持って来店しました。
「これ、不良品だったの。袖が切れてるでしょう」
見ると、袖口の近くに細い切れ目があります。
糸がほつれたというより、何か鋭いものが当たったような、まっすぐな傷でした。
女性客は「買ったときからこうだった」と言います。
その場では原因を判断できなかったため、店側で商品を預かり、状態を確認することになりました。
チーフはメーカーにも問い合わせ、同じ商品で同様の不具合が報告されていないか確認しました。
後日届いた回答では、同じ箇所が自然に裂けるような不具合は確認されていないとのことでした。
ただ、それだけでお客様が傷をつけたと決めつけることもできません。
店ではその一件について返品を受け付け、商品は確認用として保管することになりました。
また同じ場所にあった傷
それから三週間ほど経った頃、女性客が別の服を持って再び現れました。
「これも不良品なの」
今度も袖口付近に、細くまっすぐな切れ目があります。
チーフは商品を確認したあと、前回保管していた服も持ってきました。
二枚をカウンターの上に並べると、切れ目の位置も形もよく似ています。
女性客はそれを見るなり、少し強い口調で言いました。
「2枚とも不良品よ。私は何もしてないから」
チーフは責めるような言い方はせず、静かに答えました。
「前回の商品についてはメーカーにも確認しています。同じ箇所に同様の不具合が出ている記録はありませんでした」
さらに今回の商品についても、縫い目がほどけたのではなく、生地そのものに外から切れ目が入っているように見えることを説明しました。
「申し訳ありませんが、今回は商品の不良と確認できないため、返品としてお受けすることはできません」
女性客はしばらく二枚の服を見ていましたが、それ以上は何も言いませんでした。
やがて持ってきた服を紙袋に戻し、そのまま店を出ていきました。
あとでチーフは私に言いました。
「こちらから決めつける必要はないよ。確認できた事実と、店の規定を説明すればいいから」
その言葉が、今でも印象に残っています。
それ以降、その女性客が返品を申し出ることはありませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














